2012年10月 コマニーの中国子会社での不適切な処理?(二重監査契約

 パーティション製造販売のコマニー(石川県小松市。名証2部)は、2012年10月、第三者調査委員会の調査結果を公表しました。
 この調査結果では、同社への証券取引等監視委員会による立入調査を受けて、①中国子会社における会計処理の妥当性、②子会社の該当性、③関連当事者取引の該当性について検討されています。
 以下、①と②③とに区分して、自分なりに気になった点を紹介します。
 なお、議論の前提として、複数の中国子会社は12月決算で、親会社のコマニーは3月決算でした。つまり中国子会社の12月決算の数値は、連結上、3月に取り込まれることになります。また、同社の直近の有価証券報告書によると、2012年3月期の同社の連結売上は27,673百万円(親会社単体26,765百万円)、連結当期純利益は552百万円(親会社単体574百万円)でした。つまり中国子会社の連結財務諸表に与える量的な重要性は必ずしも高くはない状況でした。
「①中国子会社における会計処理の妥当性」については、中国子会社の監査を担当する監査法人の不適切な指示に起因して二重監査契約がなされていたことが問題となっています。本稿では、この点を扱います。
「②子会社の妥当性」については、中国子会社(格満林実業)の副総経理C(副社長)が設立した会社「捷林格」が子会社に該当するかどうかが問題となっています。調査報告書の結論では、捷林格は「当初よりコマニー又は格満林実業の子会社に該当すると判断する」と結論付けています。この点、判断の当否が問題視される可能性があるでしょう。これは、次回検討しようと思います。
「③関連当事者取引の該当性」については、上記のC副総経理及び捷林格との取引が関連当事者として開示されるべきものに当たるかどうかが問題となっています。調査報告書の結論では、「開示されるべきものに当たらないことは明らかであると判断する」と結論付けています。この点も、判断の当否が問題視される可能性があるでしょう。これも、次回検討しようと思います。

 

 さて、①の中国子会社における会計処理の妥当性について、二重監査契約の問題です。
 二重監査契約は、「A監査法人は意見不表明だったから、B監査法人にお願いして適正意見をもらった」というように、自己の都合の良い監査意見を購入する行為(オピニオン・ショッピング)として、問題視されます。
 同報告書では「中国の法制度の下では,6 月末までの監査証明が入手できない場合,税務申告や財務当局への届出が出来ず,営業許可証が不発行となり,事業停止に追い込まれる危険性があった。」「財務部長は,限られた時間の中での止む終えぬ(正しくは、止むを得ぬ)対応であったと釈明している。」としています。
 要するに、会社を潰さないために二重監査契約をした、ということです。
 同報告書では合わせて、前任監査人をかなり批判しています。

 前任監査人は結果として意見差控(意見を表明しない)としているのですが、前任監査人の監査が不当であったことを主張できれば、二重監査契約の正当化の論拠になるのでしょう。
 報告書を読む限り、確かに前任監査人の監査内容に不合理な点があるように見受けられます。
 例えば、長期滞留債権に対する貸倒引当金の計上方法について、「売掛金の長期滞留残高に対し滞留期間1 年から2 年の売掛金に対しては30%,2 年から3 年の売掛金に対しては50%,3 年以上の売掛金に対しては100%を引き当てる」という方法を前任監査人が指摘しているというのです。
 なるほど、これは簡便的で、個別に回収見込みを検討する原則的な処理方法と比較すれば、到底受け入れられない非合理的な処理でしょう。
 しかし、本当にこうした会計処理を指摘したのか、正直、驚きます。
 まさか、調査報告書に虚偽が記載されるわけはないでしょうから、前任監査人は実際にこうした不合理な会計処理を会社側に指摘しているのでしょう。もちろん中国の会計事情についても調査する必要があるでしょうが、基本的に親会社と同一の会計方針を採用することを前提とするならば、こうした不合理な会計処理の指摘はあるまじきことです。
 一方で、前任監査人の見解も聞いてみたいものです。 Takun

(次回、②③の関連当事者取引の該当性と子会社の該当性の問題を検討します)