2014年6月 「セレクト30題(第2版)」出版

 2013年の7月に出版した「セレクト30題」は、新起草方針に基づく監査基準委員会報告書の改訂(クラリティ版)を解説した書籍でした。印刷部数が少なかったせいか、第1版は売り切れとなっていました。今般、不正リスク対応基準や監査人の交代等の改正を受けて、一部、加筆修正したものを「第2版」として出版しました。よろしくお願いします。
 公認会計士試験「論文式」監査論 セレクト30題 20146月 中央経済社
 筆者 中里拓哉 大澤 豊 監修 南 成人

 

2013年7月 「セレクト30題」出版

 新起草方針に基づく監査基準委員会報告書の改訂(クラリティ版)により、監査実務や監査理論は大きく影響を受けました。本書はそのクラリティ版への改訂内容について、新たな概念の導入や重要な改訂点に絞って、ザックリと解説しています。本書は、基本的には公認会計士試験の受験生向けに作成したものですが、監査実務に従事している方で「監査基準委員会報告書のクラリティ版への変更点の概要を知りたい」というニーズにも対応できると思います。
 アマゾンでの書籍紹介はこちらです。
 公認会計士試験「論文式」監査論 セレクト30題 20136月 中央経済社
 筆者 中里拓哉 大澤 豊 監修 南 成人

2013年6月 インデックス循環取引?

 新聞報道がスゴイですね。

 今朝(6/13)の日経新聞「上場維持狙い粉飾か」「循環取引続ける」と、社会面で大きく報じています。EDINETで調べたところ、平成254月に公表している第2四半期報告書では、監査法人は「限定付結論」を表明しています。おぉ、レアなケースですね。

 

「限定付結論の根拠 

 会社は第2四半期報告書上の前年度連結貸借対照表において、繰延税金資産881百万円、その他有価証券評価差額金321百万円を計上している。その一部の会計処理について誤っている可能性があるが、会社は当該処理の妥当性を確認中であり、該当部分について十分かつ適切な証拠を入手することができなかった。」

 要するに「財務諸表の一部の適否が判明できませんでした」ということです。

 でも循環取引については、記述はありません。

 

 もう一つ、監査法人の報告書には、「強調事項」が付されています。

「強調事項

 継続企業の前提に関する注記に記載されているとおり、会社は、当第2四半期連結累計期間において、1,372百万円の経常損失、2,263百万円の四半期純損失を計上しており、当第2四半期連結会計期間末において、1,435百万円の債務超過となっている。当該状況により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在しており、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。なお、当該状況に対する対応策及び重要な不確実性が認められる理由については当該注記に記載されている。四半期連結財務諸表は継続企業を前提として作成されており、このような重要な不確実性の影響は四半期連結財務諸表に反映されていない。当該事項は、当監査法人の結論に影響を及ぼすものではない。」

 要するに、「会社は倒産の危機にあります」ということです。

 

加えて、今回の循環取引の報道。「20118月末には債務超過に陥っていた可能性」が指摘されています。

 上記の通り、監査法人のレビュー報告書では、循環取引に係る記述はありません。

会社は循環取引により、業績の悪化を先延ばしにしていたのでしょうが、監査法人はその会計操作に気付かなかったのでしょう。これは大変なことになりそうな・・・。

報道だけでなく、会社の発表する資料にも注目したいと思います。

当該不正事例の研究は、後日改めて。Taku

2013年2月 フタバ産業元社長逮捕

「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛むとニュースになる。」

 当たり前のことはニュースにはならないはずなのですが、フタバ産業元社長逮捕の記事が、日経の社会面で大きく取り上げられていました。

 つい先月でしたか、元財務・経理担当役員と元関連会社の役員らが逮捕されたニュースを取り上げましたが、もともと「社長案件」とされていたようで、今回の元社長の逮捕で、会社ぐるみの事件であったことがより一層ハッキリしました。

考えてみれば、一介の経理担当役員が社長に無断で関連会社に融資することは、まず考えられません。

もし経理担当者が社長に無断で融資したことが発覚すれば、クビで済む訳もなく、賠償の責任もあるし、特別背任等で逮捕されるでしょう。もちろん、その発覚の可能性も非常に高いです。

経理担当役員がそのようなリスクを負うならば、関連会社に融資するより、自分でそのお金を持ち去ってしまった方が「まだマシ」でしょう。

つまり、会社ぐるみであったことは当初から、容易に想定できたことで、元社長が逮捕されたこと自体は「当たり前」とも思えたのですが、これがニュースになるということは・・・。

逆に言えば、会社ぐるみで、そもそも社長に責任がある事件にもかかわらず、「実際には社長が責任を負っていない場合が多い」、ということでしょうか。

今回の報道は、滅多に社長が逮捕されることはなく、トカゲのしっぽ切りで事件が収束してしまうことが多いことを意味しているのでしょうか?

そんなことを考えると、やや憂鬱になります。taku

2013年1月 富士重工返納金13億円

20131月、同社は「クリーンロボット部における不正行為に関する返納金等について」を公表しました。その中の抜粋です。

明らかな不正が確認できた案件以外に、不正の有無の判定が困難な案件についても返納の対象とし、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)など国等への返納額は、金利、加算金を含め約13億円となりました。」

一方、以下の記述は、一年前の20122月、富士重工の公表物からの抜粋です。

「経済産業省・NEDO・JSTから委託または助成を受けた、次世代ロボット知能化技術開発、サービスロボット市場創出支援事業等8件の事業において受給した1,056 百万円のうち、約194 百万円を元クリーンロボット部長が行った不適切な請求により受給しました。・・・不適切な請求により受給した金額は社内調査で判明したものであり、今後関係省庁の調査により変更となる可能性があります。」

 

 もともと受給した金額1,056百万円のうち、一部(約194百万円)が不正な請求による受給だったはずなのに、それを越える13億円もの返納額となった背景は如何に?

 三菱電機の場合もそうでしたが、返納額の算定方法は、一般には開示されないようです。

とても気になるのですが、致し方ないのでしょう。

 ちなみに、補助金・委託事業に関する不適切な請求に対する経済産業省ならびにNEDOからの措置も公表されています。「補助金交付停止」と「委託契約の締結を行わない措置」です。

なぜでしょうか?あまり心に響きません。

これも三菱電機の影響なのでしょうか?三菱電機の場合は、指名停止措置がありながらも、随意契約でそのペナルティが骨抜きにされていたことが話題になりました。本件はこれには該当しないのでしょうか?taku

2013年1月 フタバ産業 有印私文書偽造及び同行使

 自動車部品等のメーカー、フタバ産業(東証・名証1部上場)の元財務・経理担当役員と同社の元関連会社(不正融資先とされる)の役員らが「有印私文書偽造・同行使」の容疑で逮捕されたとの報道がありました。
 報道によると、2008年10月に上記の関連会社に1,500百万円を振り込んだ(これが不正融資とされます)にもかかわらず、別の会社に振り込んだように見せかけるため振込伝票3通の写しを偽造し、監査法人にファックス送信したとのことです。要するに、関連会社への不正な貸付の隠蔽のための書類偽装が問題となったのです。
 もう4年以上も経っていました。
 今は昔、不正融資と決算修正の話ありけり。
 今回、改めてニュースになったことを契機として、昔の話を徒然なるままに紹介しましょう。

 

  フタバ産業は、トヨタ自動車等を顧客とする愛知県岡崎市にある会社で、2012年3月期の連結売上高は、3,720億円、連結従業員数9,824名の歴史ある会社です。
 同社は過去において不正融資や過年度決算修正で話題になりました(今回の報道は、過去における不正融資(1,500百万円)に関連したものと思われます)。
 不正融資は、前社長が推進してきたロボット事業(「社長案件」として聖域扱いされていたようです)のため、経理担当役員等は正式な決裁手続を経ずに関連会社の資金繰りを支援していたとされます。
 これに関連してか、当時の同社の有価証券報告書の一部(2009年3月期の財務諸表の注記事項「追加情報」)に以下の記載があります。
「当社の子会社・・・に対する不正融資に関連して、当社従業員は平成19年11月26日に、50枚の手形用紙を持ち出し、取引の裏付けのない融通手形1,500百万円(300百万円×5枚)を無断で発行して回収後廃棄処分し、未使用分の45枚の手形用紙についても廃棄処分したと供述しており、発行済みの手形については、現在公示催告の申し立てを行っております。・・・万が一手形の所持人から届出があった場合の損害を見込むことが不可能なため、その影響を連結財務諸表に反映しておりません。」
 こうした注記は異例です。
 開示上及び監査上の取扱いも議論の余地はあるとは思われますが、当時の監査人は上記の注記情報を監査報告書に「追記情報」として重ねて記載することで、利害関係者に注意を喚起しています。
 また、同社は2008年12月に2004年3月期~2008年3月期の過年度決算修正を行っています。
それも直前3期については黒字と公表した過年度数値を「実は赤字だった」とする大幅な訂正でした。当期純損益の修正前後の金額を比較すると以下のとおりです。
 2006年3月期 当期純利益11,449百万円→△12,194百万円(当期純損失)
 2007年3月期 当期純利益12,770百万円→△33,176百万円(当期純損失)
 2008年3月期 当期純利益11,046百万円→△12,622百万円(当期純損失)
 これまた異例中の異例です。
 さらに、上記に関連して同社の2009年3月期の決算は、業績悪化を受けて継続企業の前提に係る注記(重要な当期純損失の計上及び財務制限条項の抵触を理由とする)もあり、加えて同年度から開示が義務付けられた内部統制報告書には、同社は評価結果(内部統制が有効か否か)を表明せず、その結果、監査法人はその内部統制報告書に対して意見不表明としています。
 これも異例です。
 ちなみに、2011年6月の定時総会で同社の監査人は交代しています。
 2011年3月期以前はあずさ監査法人でしたが、2012年3月期以降は監査法人トーマツとなりました。
 交代理由が気になるところですが、当時の会社の公表した資料によると、「異動に至った理由及び経緯」として「株主総会の終結のときをもって任期満了により退任になるので、新たに有限責任監査法人トーマツを会計監査人として選任する」とあります。
 しかし、そもそも会計監査人の任期は1年ですから、毎年の株主総会の終結をもって任期満了となっているわけで、果たして異動に至った理由として上記が十分なのかどうか、定かではありません。
 いずれにしても、今回の報道は警察の公表を受けた形ですが、昔の話が掘り返されるような今回の報道に関して、同社はHP等で何ら対応はしていません。
 同社にとって見れば、もう過去の話として、蒸し返されたくはないのかも知れません。Taku

2012年12月 不正リスク対応基準の公開草案に思う

201212月、企業会計審議会監査部会は「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を公表しました。この中で、不正に対応する手続として注目された「取引先企業の監査人の連携」は規定されませんでした。この点も含めて、今回の新たな基準設定と監査基準の改訂について考えてみましょう。

 

1.「取引先企業の監査人の連携」について

不正実行者と取引先等の外部者とに通謀がある場合には、現状の監査手続ではその摘発に限界があります。例えば、外部の第三者に対して確認を行う監査実務は、不正実行者と確認先である第三者との通謀により無機能化されるばかりか、逆に外部の第三者からの回答が不正不存在の強力な証拠として採用されかねません。

この点、今回導入が議論された「取引先企業の監査人の連携」は、被監査会社の取引先から提供された証拠の信頼性の検証に有用であり、特に循環取引等、個々の会社に対する監査のみでは実態の解明が困難な取引の全体像を把握する上で、効果的な手法として注目されていました。

しかし、監査人が監査業務を遂行する際に遵守すべき義務として、守秘義務の問題があります。たとえ不正摘発に有用であっても、監査契約の締結先ではない企業の監査人に情報を提供することには慎重であるべきでしょう。

また、取引先企業の監査人と連携を行わなかった場合の責任関係や被監査会社及び取引先への協力義務等、実際にこうした「新たな監査人の役割」を導入するためには、様々な課題を解決しなければなりません。

そのため、同公開草案では、「検討された「取引先企業の監査人との連携」は、被監査企業と取引先企業の通謀が疑われる場合の一つの監査手続であると考えられるものの、解決すべき論点が多いことから、今回の公開草案には含め」ずに、その導入を見送っています。

 

2.新たな基準が監査人に求める役割

上記1.から、今回の不正リスク対応基準は、監査人に新たな役割を課したわけではなく、既にある監査実務上の手続を明文化ないしは整理したことにその意義があると思います。

というのも、今回の基準新設の三つの注目点(①職業的懐疑心の強調、②不正リスクに対応した監査の実施、③不正リスクに対応した監査事務所の品質管理)は、現行の監査基準や監査基準委員会報告書において、既にその詳細が規定されています。そのため、今回の基準新設の目的は、既にある実務を整理し、新たな基準として明文化することで、実務家に対する注意喚起と社会的な役割期待への対応を図ることにあったと考えられるのです。

 

3.新基準が金融商品取引法監査に限定される意味

公開草案では、今回の新設される不正リスク対応基準は、金融商品取引法監査に限定するものとされています。これは大きな疑問があります。不正リスク対応基準が一般に公正妥当と認められる監査の基準に含まれる以上、会社法監査であってもその遵守が求められることに変わりありません。

もちろん上記1の「取引先企業の監査人との連携」という特殊な役割を監査人に課すのであれば、金融商品取引法監査に限定することの意味はあったのでしょうが、今回の基準新設が単に現行の監査実務を明文化したに過ぎないのであれば、これを金融商品取引法監査に限定する意義は乏しいはずです。

むしろ、そうした適用範囲の限定が、監査の水準に相違があるかのような誤解を招きかねないことから、新基準はすべての監査に適用されることを明記するべきです。

 

4.「三 監査基準の改訂について『1.審査』」について

我が国の保証業務の実務では、監査よりも保証水準の低いとされるレビューであっても例外なく審査が求められています。これに対して、今回の監査基準の改正では、監査であっても「審査を受けないことができること」を明記するものです。

監査業務の多様化に鑑みれば、確かに審査を受けない監査があり得ることを否定するつもりはないのですが、現時点では極めて稀な状況と考えられますし、審査を含めた品質管理の実務が漸く浸透してきた現時点において、かえって品質管理の水準の低下の要因となるかのような規定をあえて設ける必要性は乏しいと思われます。

また、審査に代わる他の方法に関する議論も不十分なままに、監査の規範の中心に位置付けられる監査基準において「審査不要な監査があり得る」と先行して明示することは、品質管理における審査の重要性が強調されるほどに、監査の質の合理的な確保が危惧され、結果として監査に対する社会的信頼を損なう要因ともなりかねません。

以上から、審査不要な監査があり得ることを監査基準に明示することは時期尚早と考えます。今後、公開草案がどのように変更されるか、注目です。Taku

2012年12月 三菱電機水増し請求に係る報道(その2)

やはり昨日の日経新聞がスクープだったのですね。

本日1221日、三菱電機株式会社が「防衛省、内閣衛星情報センター、宇宙空港研究開発機構及び情報通信研究機構との契約における費用の過大請求に関する返納金の引当計上の見込みについて」及び費用の過大計上・過大請求事案の社内調査結果と再発防止策についてを公表しました。

資料によると20133月期第3四半期の連結決算において、過大請求額及び関連する違約金・延滞利息の見積額773億円を営業外費用に引当計上することが見込まれ、その結果、2013年の当期純利益見込みは1,200億円から500億円に減少することのことで、防衛庁への返納金では過去最高になる模様です。

本資料を読んで、個人的に目に止まったキーワードは以下の通りです。

これらの用語の意味するところを理解すれば、今回の不正事例の背景や動機、不正に対する意識等が理解できると思います。

 

「工数の付け替え」

実際の工数が目標工数に合致しない場合、別の工事に計上するか、または計上しない~

 

「原価監査付契約」

~実際にかかった費用が契約にて認められた原価よりも少なかった場合に契約金額の減少や超過利益の返納が発生する契約~

 

 「上位者の関与」

~工数の付け替えは「目標工数を遵守する」立場の課長を中心として行われ、部長以上の・・・幹部が・・・積極的に関与していた事実は認められませんでした~

 

「直接作業率の維持」

~計上工数を就業時間で除したもので、工数を付け替えて直接作業率を維持することで人員の削除を回避~

「工数修正端末」

~顧客の制度調査に対し、・・・工数の付け替えが発覚するのを恐れ・・・工数付替用の端末の存在も秘匿していた~

 

次回は「ニュース」ではなく、「不正事例」で、これらを詳しく検討しようと思います。taku

2012年12月 三菱電機水増し請求に係る報道

 今日(20121220日)の日経の朝刊の一面記事です。

「三菱電機、500億円返納へ」

 以前にも不正事例研究会で扱いました「201210月三菱電機の過大計上に思う(再)」の続報です。

 40年近くも水増し請求が続いていたと報道されたのが約2ヶ月前です。今回の記事では、「水増し分と違約金を合計した返納額が500億円規模になることが19日、分かった。同省への1社での返納金としては最大になる見通し。三菱電機は20133月決算で返納金を損失に計上する。現在1,200億円を予想している連結純利益は、ほぼ半減する可能性が高い」とあります。

 最も気になるのはその算定方法です。

どれくらい水増しがあったのか?

どれくらいの期間遡及したのか?

(皮肉を交えれば、今後どれくらいの期間をかけて、その返納金相当額を、「また」三菱電機に戻すことになるのか?(そんなことはないでしょうか?))

その当たりをよく知りたかったのですが、「関連記事」もないので、この記事には欲求不満でした。この点、三菱電機のHPを見ると「本日、当社の防衛・宇宙事業における返納金に関する一部報道がありましたが、当社が発表したものではありません。」とあります。

情報がどこからか漏れたか?

日経の記者がすっぱ抜いたのか?

ガセネタ?まさか。

「現在もお客様の調査に全面的に協力しているところであり、業績への影響等は、状況が明らかになり次第開示いたします。」との発表は、非常に冷静沈着。今回の報道でさらに注目度合いがアップしてしまいました。今後の報道と同社のIR情報が気になります。Taku

2012年2月2日 ロイヤル監査法人に対する行政処分勧告

 公認会計士・監査審査会は201221日、「ロイヤル監査法人に対する検査結果に基づく勧告について」を公表しました。これは、当該監査法人の運営が著しく不当なため、金融庁長官に対して行政処分その他の措置を講ずるよう勧告したものです。

 著しく不当とされた点は以下の通りです。

1.監査業務の品質確保の意識が欠如し、品質管理のシステム全般にわたり不備がある。

2.監査の基準に準拠した監査手続が行われていない。

3.監査計画の審査や内部統制監査の審査の非実施が見られ、審査体制は極めて不適切である。

4.日本公認会計士協会の品質管理レビューの指摘事項の改善状況を確認していない。

 

 痛恨のニュースです。

 多くの公認会計士、監査法人は、監査の品質管理のため努力しています。

一部の者によるこうしたニュースは、その努力を無にしかねず、業界全体の信頼性に重大な悪影響を与えます。Taku

2012年1月31日 プロデュース会計士に実刑判決

 新潟の工作機械メーカーのプロデュースの粉飾事件で、①証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)と②業務上横領(監査法人の口座から4,900万円着服)の罪に問われた公認会計士に、さいたま地裁は懲役3年6ヶ月の判決を言い渡しました。

 判決では、①粉飾には重要な役割を果たしたとされ、また②私的流用は公私混同で厳しい非難を受けるとされています。

 同事件では社長も実刑判決を受けています。社長は懲役3年だったはずですが、それよりも長い?

 

 事件の詳細はこちらです。Taku

 

2012年1月17日 三菱電機の防衛庁等に対する水増し請求

 三菱電機が、防衛庁、内閣衛星情報センター、独立行政法人宇宙航空研究開発機構に対して経費の水増し請求していたことが明らかになりました。実際にかかった工数を水増しして、費用を実際よりも多く計上する手口です。

 この不正は、内閣衛星情報センター等から、三菱電機の鎌倉製作所における原価集計などに関する問い合わせから発覚したそうです。

 三菱電機は、三機関から指名停止、競争参加資格停止処分を受けました。

 

 一般に公の機関は予算消化型組織とされ、一度決まった予算をきっちりと消化することを優先するあまり、無駄をなくす、余計な支出を削減する、といった意識が低いとの指摘もあります。しかし今回の不正発覚は、公の機関における無駄をなくす努力の結果として評価されると思います。

 

 騙したほうが悪いに決まっていますが、騙された方に問題があることも考えられます。

 騙されないように相手を監視する姿勢が高まれば、税金の無駄遣いは減っていくことでしょう。

 

 それにしても三菱電機は、防衛庁等をどれだけだまし続けたのでしょうか?

 今後の調査が注目されます。taku

2012年1月17日 オリンパス監査役に対する損害賠償請求訴訟を提起へ

 下記の1月10日の取締役に対する損害賠償請求訴訟についで、オリンパス株式会社の監査役等責任調査委員会が、2012116日、調査報告書を公表しました。 http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/data/tes/2012/pdf/nr20120117.pdf

 同報告書では、当時、経理部長の職位にあった者が多額の含み損があることを知悉していたにもかかわらず、監査役就任後に黙認し続けたことや、巨額の会社買収や巨額のフィナンシャルアドバイザリー報酬の支払いについて、取締役の善管注意義務違反を看過したとして、監査役に対して10億円の損害賠償を求めることとしています。一方で、監査法人について注意義務違反は認められないとして、損害賠償請求の対象にはしませんでした(両者の責任の相違についてはコラムで「オリンパス事件。監査役は責任あり、監査法人は責任なし」で考えてみました。)。

 監査法人の行った監査実施上の問題の有無については、公認会計士協会や金融庁の調査も進んでおり、今後の動向が気になります。

2012年1月13日 スーパーマーケットのタイヨー 売上金の横領 現金商売の難しさ

 スーパーマーケットの株式会社タイヨーで起きた不正は、庶務担当の女性が帳簿を改竄し、売上金から現金を着服し、生活費、遊興費等に充てていた事例です。

 不正総額は約70百万円です。

 詳しくはこちらです。 

2012年1月10日 オリンパス取締役に対する損害賠償請求訴訟

 オリンパスは取締役責任調査委員会の調査報告書の受領及び当社現旧取締役に対する損害賠償請求訴訟の提起並びに今後の当社の対応に関するお知らせを公表しました。

 そのお知らせによると、「現旧取締役の支払能力や各席人原因に対する関与の度合い等を考慮の上、損害額の一部について・・・取締役に対する損害賠償請求訴訟を提起することを決定」しました。

 今回の不祥事の首謀的な役割を担ったとされる三名に対する損害賠償請求額は以下の通りです。

 元社長  36億1000万円

 元副社長 28億1000万円

 元監査役 30億1000万円

 取締役に対する請求金額は、各取締役の間で連帯債務となり、上記請求金額の全てが支払いを受けられるわけでなく、36億1000万円がその上限となるようです。

 なお、この損害賠償請求提訴の根拠となった「取締役責任調査委員会の調査報告書」は、こちらです。

 

 

2012年1月5日 在庫の水増し

 

 去年末の12月28日、株式会社マキア(JASDAQ)が不適切な会計処理の調査結果について、調査報告書を公表しました。それによれば、家電仕入担当者が自己の営業成績を仮装するため、伝票を操作することで架空の在庫を計上していたようです。

 家電仕入担当者は、粗利益の予算や想定値に対する実績不足を取り繕うことで、自己のプライド保全を図ったことが当該不正行為を行うに至った大きな要因であるとし、会社からの無謀な予算の押しつけや、上司等からのパワーハラスメント等の事実はなかったと供述しているようです。

 この事件については、不正事例「その他の不適切な会計」でもう少し詳しく記述しています。

 

2011年12月26日 共同ピーアール ワンマン経営

 

  JASDAQ上場の共同ピーアールは、20111226日下記資料を公表しました。

 ワンマン経営そのものが問題なのではなく、ワンマン経営してはならない人がワンマン経営をしていることが問題なのでしょう。

 詳細は、不正事例の利益相反のこちらで扱っています。

 

 以下、公表資料です。「取締役会への内部調査報告書の提出について」

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120111226059575.pdf

2011年12月26日 カードの無断作成

 アテクト(JASDAQ)は、社内で管理職不正があったことを公表しました。この不正の手口は、会社名義のカードを会社に無断で作成するという単純なものです。公表資料からは詳細な不正の手口は不明ですが、多数の口座やカードを作り、その代金決済を繰り返し続けていたとしたら、多額の私的流用が行われる可能性はあります。会社側は「発見は困難」としていますが、確かにそうでしょう。

 なにしろ業務を管理する側の人間が不正を行ったわけで、誰も知らないところでカードが作られて、勝手に使用されていたわけですから、会社側はその不正を知る由もないでしょう。

 こうした管理職不正は、どのように防止・派遣する仕組みを作るか、なかなか悩ましいモノです。

 管理職といっても、ある程度の配置換えや強制的な長期休暇等の不正防止ないし不正発見策を講ずる必要があるのでしょうね。

 

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