ニイウスコー粉飾事件 2011年9月元会長に実刑判決

   

ニイウス コー株式会社

調査委員会の調査結果概要と当社としての再発防止策について20084

 

 日本IBMと野村証券とが合弁で設立したシステム開発会社(東証1部も2部へ転落)であるニイウス コーは、20084月に民事再生申請後、同年6月に上場廃止となり、20109月に解散しました。

 その前、20076月決算で多額の赤字を計上して債務超過に転落していますが、20066月と20056月の決算で組織的な業績の嵩上げ行為(売上高274億円、経常利益114億円のそれぞれ過大計上)が行われていることが明らかになります。

 本不正事例を端的に言えば、ワンマン経営やノルマ主義による弊害が露呈した事件で、組織的かつ悪質な粉飾により金融市場の信頼を大きく損なう事件として位置づけられます。

 20119月、首謀者である元会長は懲役3年、罰金800万円の実刑判決を受けました(上告中)が、副会長は懲役26ヶ月(執行猶予4年)、罰金300万円の判決でした(元副会長の控訴審判決で東京高裁は、2013年1月、左記の一審横浜地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却しています)。

 

 以下、不正の手法を①~⑤に分けて説明します。

<①スルー取引 >

 一般に、スルー取引は口銭の収受のように、本来であれば単に仲介手数料の収受として計上すべき取引です。例えば、販売元A社と販売先B社との間で100の売買契約があった際に、会社がその取次をして口銭として3の手数料をもらった場合には、本来は収入手数料3を収益計上すれば足ります。しかし、この取引を売上高103、売上原価100として計上すれば、売上高を嵩上げすることができます。

 さらにこの事例では「実体のないスルー取引」として、単純に売上高と売上原価とを同額計上しているケースも含まれているのかも知れません。

 こうした処理によっても損益には影響を与えませんが、売上高が嵩上げされることで、成長性をアピールすることができるのです。

 

<②セール&リースバック取引>

 所有する資産を売却して、その売却先からリースしてもらう手法をセール&リースバックといいます。一般には手元流動性を高める金融的な手法として利用されることが多いようです。

 この方法によると、売却時点で利益が一括計上される一方で、その後の費用がリース期間にわたり計上される場合、利益の先取りができますが、本来であれば、リース期間に応じて損益を調整する必要があります。

この点については、営業担当者には不正の意図はなく、会計基準の認識・理解不足から生じたものとされています。

 

<③リース契約(会社)を利用した不適切な循環取引>

 滞留在庫や仮払金・仕掛品等に資産計上したSE作業コスト、その他の資産をまとめて売上原価として販売したことにして、これを売却先、転売先経由で会社がリース会社からリース資産又は買取資産として計上する方法です。

 いわゆる循環取引ですが、リース会社が絡んでいるのが特徴でしょう。  

 

<④売上の先行計上とその後の失注処理、買戻しによる循環取引>

 単に販売先に預けているものを売上として先行計上し、返品された場合には、販売先から転売先を経由した形にして、最終的に会社が買い戻す方法です。

 これも販売した商品が販売先、転売先を経由して自社に環流していることから、典型的な循環取引に位置づけられます。

 

<⑤不適切なバーター取引による売上>

 本来、バーター取引は「物々交換」を意味しますが、本取引はいわゆる「クロス取引」として理解した方が良さそうです。

 本事例では、自社商品を嵩上げされた価格で販売する代わりに、販売先から別の商品を嵩上げした価格で購入する取引が行われていました。確かに双方が実需に基づいて取引すれば、特に問題にはならないのですが、双方が業績を嵩上げするために商品を販売しあっているのであれば、立派な不正に該当します。

 

<不正が発生した原因>

 こうした不正が発生した最も大きな原因は、兎にも角にも元会長の経営姿勢にあると思われます。

 元会長が他の旧経営陣らに対し、達成不可能な社内予算や、その達成率に応じた高額な給与の支給の他、売上や利益の目標を達成するよう強いプレッシャーを与えていたことが同報告書で問題視されています。その結果、従業員らは適切か否かにかかわらず、売上や利益の目標達成を至上命題として仕事していたのです。

 本事例は、ワンマン経営による独断専行を許容する体制のもと、監視機能不全に陥った企業風土の中で、悪質な粉飾が行われた結果、金融市場の信頼を大きく失墜した大変不幸な事例といえるでしょう。