共同ピーアール ワンマン経営の社長と他の取締役 2011年12月

 ワンマン経営そのものが問題なのではなく、ワンマン経営してはならない人がワンマン経営をしていることが問題なのでしょう。

 

 JASDAQ上場の共同ピーアールは、20111226日、「取締役会への内部調査報告書の提出について」を公表し、「長きにわたって・・・社長が代表取締役の座にあった弊害・・・コンプライアンス軽視、体制の欠如は、そのまま社長の意思・・・、社長にモノ申すことが憚られる企業風土」を問題視して、元社長の不正を明らかにしています。

 この社長は、会社の業務以外にいろいろと投資や借金をしていたようで、個人的に資金捻出に窮し、「どこからか借りては借金を返す」ことを繰り返していました。会社のお金を個人的に流用したとされる本不正事例は、公私混同そのものであり、上場会社の社長としてはあるまじき行為です。

 この社長の不正にはS氏とK氏という取締役が荷担していました。この報告書ではS氏とK氏は社長の指示を断るべきであったとして、両氏の対応を問題視しています。

社長の貸借に関わる流れとして、一度の借入額は15百万円~120百万円で、200912月から201110月までの間で433百万円に上ります。そのうち、直ちに返済されたものもありますが、返済されれば良いという問題ではなく、会社のお金を個人的に流用したこと自体が問題視されなければなりません。

この報告書の公表の翌日、この社長と不正に荷担したとされるS氏とK氏は取締役を辞任しています。

当然といえば当然なのかも知れませんが、やや気になったのが、S氏とK氏の辞任理由が「一身上の都合」とされている点です。

開示資料を見る限り「不正に荷担した責任をとった」とした方が整合性はあると思います。

これをあくまで「一身上の都合」としたことに、何らかの理由があるのか、定かでありません。

  

一方で、辞任しなかった取締役の中に、S氏及びK氏と同じ立場にいたとしたならば、社長の指示を断固として断ることができた人物がいたのか、これもまた定かではありません。

 

いわずもがなでしょうが、取締役の責任はとても重いのです。

たとえワンマン経営の社長であろうとも、その不正に「荷担」することは言うに及ばず、これを「黙認」することも許されません。こうした取締役の責任に関する意識があったのかどうか?ハッキリしませんが、例えば、S氏とK氏の辞任理由を「一身上の都合」ではなく、「不正に荷担した責任をとった」としたらどうでしょうか。

この場合、「不正に荷担した責任」だけでなく「不正を黙認した責任」が連想されます。

こうした連想をさせないようにするために、「一身上の都合」というようにお茶を濁したかもしれません。やや考え過ぎかも知れませんが、こうしたやり方には、「運悪く不正に荷担した者のみを切り捨てればよい」という意向が見え隠れしており、やや気が滅入ります。

辞任しなかった取締役は、辞任した取締役に対して何を思うのでしょうか。

逆に、辞任した取締役は、辞任しなかった取締役に対して何を思うのでしょうか。 

 

 その後、2012年2月に、同社は内部統制報告書の訂正報告書(2009年12月期、2010年12月期)を提出し、「取締役会や監査役による監督機能が十分でなかった」として、 内部統制に「重要な欠陥」があったことを明らかにしました。Taku