2014年3月 元フジテレビ社員による不正流用

 株式会社ストーリアは、フジ・メディア・ホールディングスの100%子会社で、ブライダル事業(婚礼プロデュース事業)を行っています。本不正事例は、その会社の元社長が、会社資金を私的流用した事件です。(公表資料はこちら) 
 この元社長はフジテレビの元社員で、多くの著名な番組制作に携わっていたそうです。
 テレビ局の給料は総じて高いですし、著名なプロデューサーであれば、相当額の収入があったとも考えられるのですが、それでは足りなかったのでしょう。真偽は定かではありませんが、証券取引での損失を補填するための資金横領との噂もあります。
 横領期間は約3年。横領金額は約1億円。比較的早期に発覚したケースかもしれませんが、何より「社長の不正」という異質な面は注目されます。
 不正の手法は単純で、会社の銀行口座から不正実行者の個人の銀行口座への不正送金を行っていたようです。通常の内部統制では、期末日等の締日に銀行預金の残高を検証することが一般的ですが、そのコントロールによる不正発覚をおそれて、いずれからか一時的に資金を調達してこれを返還し、また締め日後に払い戻していたとされます。
 通常の監査手続でも、単純に期末日時点の残高のチェックを行うだけでなく、通帳や当座照合表等を通査して、期末日前後に不自然な入出金がないかどうかを検証する必要があります。この会社で3年以上にわたりこの不正が発覚しなかったのは、こうした期末日前後の異常の有無の検証が不十分で、単純に残高の検証のみに留まっていたからかもしれません。
 きっと優秀な人材で、相当な手腕の持ち主であっただろうのに、魔が差して会社の資金に手をつけてしまったのは、なんとも不幸と言う他ありません。
 しかし気になるのが、同社の公表した資料です。
「なお、当社の会社資金の私的流用につき、お客様への損害はございません」
 それはそうでしょう。
 しかし、「お客様への損害がないこと」=「当たり前なこと」を殊更に強調すると、なにか意図せざるメッセージが付加されているように読めませんか?
 「お客様には関係ないこと」=「外部の人にとやこう言われる筋合いはない?」

 なお書きとはいえ、やや抵抗を感じてしまうのは、私だけでしょうか?Taku