2015年7月 不正の多発。七夕に思う。

 最近、不正事例の紹介の頻度が落ちていましたが、その主な要因は拙著「財務諸表監査の実務」の執筆、校正作業に起因します。現在、その作業は一段落したので、今後、時間を見ながら不正事例の紹介に励んでいこうと思っております。現時点でも、東芝、Lixil等、気になっている不正がいくつもあります。
 さて、私は不正事例を紹介する際、TDnetの適時開示情報閲覧サービスを利用しますが、ここ最近の1ヶ月で「不正」というキーワードで検索すると4件もヒットしました。しかも全てが、現預金の不正流用です。普段はゼロ件~1件ですから、ちょっと驚きです。
 以下、簡単にその4件を紹介します。
 
2015年7月3日 山加電業株式会社(JASDAQ)
 子会社の元代表者により、マンション管理組合の管理する修繕積立金等の預金が不正に引出されていることが判明。2010年4月~2015年6月の間の被害総額は約70百万円。元代表者は所在不明とのこと。2015年6月16日に元代表者は解任され、被害額については、親会社が弁済義務を負うとのことです。
 元代表者による不正である以上、内部統制による防止、発見には限界があったと思われますが、この元代表者は所在不明とのこと。逃亡したのでしょうか?

 

2015年7月1日 高木証券株式会社(東証2部)
 有印私文書偽造及び同行使の罪で元従業員、曾根崎警察署へ告訴。2014年1月~2015年4月にかけて8名の顧客の口座から約17百万円を不正に入手して自己のFX取引の損失の他、遊興費等に当てていた。2015年6月末に懲戒解雇。業績に与える影響は極めて小さいとのことです。
 必ず発覚してしまうのに、なぜ客の金に手を付けるのでしょうか?発覚はお客からの指摘だったそうですが、内部牽制での防止、内部調査等での発覚は不可能だったのでしょうか。

 

2015年6月15日 ルーデン・ホールディングス株式会社(JASDAQ)
 子会社の従業員による修繕積立金等の詐取。2008年4月~2015年5月にかけての被害総額は約70百万円。契約に基づいて親会社が弁済する予定とのこと。不正実行者は詐取したお金を遊興費等に全額使ったと供述しています。
 「修繕積立金」が「70百万円」詐取され、「最近発覚」した点で、この不正は上記の山加電業と酷似しています。修繕積立金は「ほったらかし」にされやすいので、不正が長期間放置される傾向があるのでしょう。定期的に残高を担当者以外の者がチェックする仕組みが必要なのです。

 

2015年6月22日 地盤ネットホールディングス株式会社(東証マザーズ)
 元経理部長による売掛金の回収代金の着服。2015年2月~4月までで被害総額は5百万円。
不正実行者は経理部長の地位を利用して、顧客から預かった小切手を本人名義の銀行口座に入金して着服。主に遊興費に使用していたとのことです。
 「経理部長」は種々の権限は付与されていることが一般的ですから、「不正をやろうと思えばできる」という立場であることが多いようです。しかし、実際には「やろうと思わない」という人が経理部長になっていることが多いと思います。一方で、本不正は比較的短期間で、早期に発見されたように見受けられます。不幸中の幸いでしょうか。

 

 今夜は七夕です。
 不正事例研究会としては、「不正が無くなりますように」との短冊を書きたいところですが、なかなか現実的にはそうも行かないでしょう。
 より現実的に、「不正が事前に防止されますように」だけでなくて、「不正が発生しても直ちに発見されますように」、「発見された不正は直ちに是正されますように」と祈ることにします。
 今宵は、旧知の友人と事務所の斜向かいの「てんぷらや」で食事です♪ taku