2011年12月 ナノ・メディアにおける会社資金の不正支出

外注先に架空の発注を行い、仮装した請求に基づいて代金を支払い、役員個人の口座に環流させる手口は、不正の典型的なパターンです。

 ナノ・メディアの元取締役は、自らが決裁して外注を発注し、一部外注の事実のない支出(総額30百万円)を行いました。この不正支出は元取締役の口座に環流していました。

 この種の不正は「一人の不届き者」が問題とされ、組織的な犯罪とは一線を画します。

役員クラスまで登りつめた方が、なぜこうした不正に手を染めてしまったのか。

やや理解に苦しむところですが、この事件で着目される点は、国税局の調査を発端としてこの不正が発覚したことです。

通常、税務調査というと会社は抵抗感を抱きますが、本件は会社からすれば大変ありがたい税務調査になったことでしょう。この国税局の調査で発見されなければ、不正による被害額がさらに多額になっていたかも知れないからです。

 ちなみに同社は、この不正支出が発生した原因について、取締役会の決裁機関としての機能が不十分、稟議書制度の運用の不徹底、取引先の選定等に係る手続上の問題をあげています。

 不正を防止するには「魔が差さないようにすることが重要」と言われますが、不正を防止する仕組みである内部統制を構築するのが役員である以上、その役員の不正の防止には限界があるといわれます。

役員に対する不正防止策を検討する以前の問題として、役員としての資質が問題視されるべきなのかも知れません。