富士重工 クリーンロボット部における不正行為 2012年2月

 富士重工は、2012年2月、「クリーンロボット部における不正行為について」を公表しました。

 富士重工という大規模企業グループ内にあって、不正が行われたクリーンロボット部(清掃用のロボット事業)は、2010年度売上高217百万円(人員8名)という非常に小規模で、かつ特殊な部署だったようです。
 小規模であるが故に日常的運営を独自に行いうるし、新規事業であるが故に他の組織との業務上の関連性が極めて低い。また不正実行者であるクリーンロボット部長は、その業界では一定の評価を受けており、属人的にビジネスを進められる状況にあったと、同社は不正の原因を分析しています。
 
 また、同社はこの不正の動機を三つ示しています。
 ① 正規の手続を経ずに使用する資金(要するに裏金)づくり
 ② クリーンロボット部の業績の赤字を回避
 ③ 社外でクリーンロボット事業を行う目的で自ら設立に関与した企業への資金移転
 基本的な不正の手法は、架空発注によって会社の資金を外部に流出させて裏金とし(①)、またその裏金を使って売上の入金を仮装し(②)、さらには自ら関与する会社への資金移転(③)を行っていました。その結果、外注取引先に対して106百万円が過大に支出されたようです。
 「不正は裏金づくりから」、よくある話です。
 裏金さえできれば、あとは比較的自由に不正が実行できますから。

 加えて本事件で特筆すべきは、社内の問題だけでなく、経済産業省等の公的機関に対する不正請求が伴っている点です。具体的には、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)からの委託事業・補助金事業に関して、外注取引先からの水増し請求や労務費等の水増し請求により、194百万円の不適切な請求があったとされます。
騙された側の公的機関はあくまで被害者ですが、公的機関には大切な税金を騙されて取られないように注意して欲しいとも思います。

 内部統制は管理職の不正には有効に機能せず、無機能化しやすいことも事実です。
 また、会社が指摘するとおり、特異な状況下において外注取引先と共謀し証憑を偽造するなどの巧妙な手口によって不正が行われていた場合には、会社側が不正を発見することは困難が伴うでしょう。
しかしながら、不正が発覚したときには、ほとんどの場合、「不正の兆候」があるものです。「なんか変だな」、「最近、怪しい動きが多い」という「不正の兆候」に適時に反応できる「風通しの良さ」「機敏な意思決定」が不正発見の糸口になります。
 承認手続の強化や定期的な配置転換、内部監査の強化や内部通報制度等の対応は、基本的かつ教科書的なのですが、どうしても形式的なルールの構築に終始しやすいものです。そのルールを実質的に機能させるには、具体的な不正事例から学び取った経験則を基盤として、当事者意識を持ちながら有効な内部統制について社内で議論することが肝要なのです。Taku