2012年6月 子会社役員不正(水増し請求と横領)

クレーンで有名なタダノの子会社での役員不正です。

同社が公表した資料はこちらです。

米国販売子会社タダノ・アメリカの法務担当役員である副社長(51歳)が、2010年11月~2012年4月にかけて、法律事務所への支払いを装って900万ドル(80円換算で7億2千万円)の費用(推定)を水増しして横領した疑いがあることが判明しました。
読売新聞の報道によると、子会社の日本人社長が、その不正実行者を問いただしたところ、「ここは裁判所ではない」と言って席を立ち、そのまま行方が分からなくなったようです。妙な話です。
同社では、実際に様々な訴訟費用や調査関連費用の支出が存在したため、これを水増しして経費計上されたとしても見抜けなったといいます。一方で、2012年3月に米子会社から法務予算の大幅な増額要求を受けて、タダノ本社が調査を開始し、その結果、架空の法律事務所への支払いが発覚しました。
タダノ・アメリカは、損害回復のための民事手続を申請する一方で、副社長を刑事告発し、現地では既に家宅捜査が行われ、逮捕状が出たとの情報もあるようです。

会計的に気になるのは、上記公表資料の以下の記述です。
上記の900万ドルのうち「約313万ドルについては既に費用化されており、当社の2010年度及び2011年度経常利益・当期純利益に与える影響はございません。なお、当社の2012年度業績に与える影響につきましては、現在精査中・・・。」
「既に費用化されており・・・」ん?
その費用化されたこと自体が問題なのでしょう。
会社が本来負担すべきでない費用が会社負担になってしまっているから、損害回復のための民事手続するわけでしょう。つまり、不正実行者に対して返済を求め、その返済能力如何によっては、不正実行者に対する未収入金を計上することも考えられます。
結果的に、不正実行者に返済能力がなければ、残念ながら業績に影響はないでしょうが・・・

今後の同社の調査結果の公表が気になります。Taku