2012年 フジシール パソコン不正発注と横領

 ラベルやパウチ等で有名なフジシールインタ-ナショナル(東証一部)のグループ会社である株式会社フジシールにおいて、元従業員(設備部門の技術部長職)による不正行為が発覚しました。
 同社の公表資料によると、不正実行者である元従業員は、平成18年10月から平成22年10月にかけてパソコンを購入し、第三者に転売する手法で現金を着服していたようです。同社では、当該元従業員を刑事告訴することを決定しています。
 不正購入額は約47百万円。
 これは会社の損害額で、これを転売するともう少し安くなるでしょうから、不正実行者が手にした金額は30百万円~40百万円といったところでしょうか。個人的には多額に思われますが、フジシールインターナショナルという企業グループ全体から見れば重要性は乏しいでしょう(ちなみに平成24年3月期の連結売上は880億円、純利益は43億円でした)。
 もとより「重要性はないから問題はない」という訳ではありません。会社側も「業務プロセスの見直しや牽制機能の強化など内部統制システムの見直しを行い、再発防止に取り組んで」いるようです。
 報告書を見る限り、具体的にどのような手口だったかハッキリはしないのですが、4年間という比較的長期間をかけて、かすめ取った資金が47百万円程度となると、年間1千万円超です。パソコンは数十万円でしょうから、不正実行者は、年間、数十台の不正な購入手続を続けていたはずです。
 一般にこうした不正を防止又は発見するには、購入した固定資産の現物と固定資産台帳等の定期的な照合を行うことが必要です。固定資産に計上されずに経費処理されてしまう消耗品や器具備品についても、単価の比較的高いもので数の多いもの(特にパソコンは不正の対象になりやすい)は、何らかの管理資料(現物の一覧表等)を保持しておき、現品と帳簿とを照合できるように現物にシールを貼付しておく必要があります。
 固定資産の現物と帳簿とを定期的に照合しているのであれば、現物の横流しをすれば直ちに発見されるでしょうし、またそうであるならば、不正実行者はそうした不正を行うことに躊躇いを感じることでしょう。
 この会社はシール(というよりもパッケージ的なものですか)の専門会社です。
 お客さんの製品にシールを付ける商売ですが、自分の固定資産にはシールを貼っていなかったのでしょうか?

 余談ですが、本事件を見て、先日リース会社の開催したセミナーを思い出しました。
 有形固定資産の現物管理のソリューションに関するセミナーでしたが、有形固定資産の現物にバーコードのシールを貼付して、ハンディタイプの端末を使ってバーコードを読み込み、有形固定資産台帳と現物とを照合する仕組みです。なかなかの優れもので、効率よく現物管理が行えそうなサービスでした。

 有形固定資産は、金額も多額である一方で、使用期間が長期にわたり、現物の新規購入や廃棄、売却、移動も考えられ、加えて管理担当者の移動も考えられるため、実際には固定資産の現物と帳簿とが一致していないケースが多々あります。あるはずのものがなかったり、帳簿上なくなっているものが何故か存在していたりすることも稀ではありません。
 内部統制監査が導入されて、幾分かは改善されている会社も多いようですが、内部統制監査とは縁のない中小企業ではまだまだ管理不十分な会社が多いはずです。一度、固定資産の現物と帳簿とを照合してみませんか?
 いままで一度もそんなことはしたことはない、という会社では、意外なほどに帳簿と現物との間に相違があることが明らかになることでしょう。
 「何故こんな相違があるのか?」
 原因究明できない「謎」「ミステリー」に直面するかも知れません。Taku