2013年4月 JXホールディングス子会社経理担当者による不正請求

 JXホールディングスは、「当社子会社元従業員の不正行為に関するお知らせ」において、子会社の経理担当者を電子計算機使用詐欺の容疑で警視庁愛宕警察署に刑事告発したと公表しました。

 開示資料や報道からは、不正の方法は単純なようです。

 不正実行者が経理処理用の端末機を操作し、取引先への支払名目で元従業員名義の銀行口座に不正に送金し、着服が発覚しないように出金の勘定科目を振り返るなどして書類を偽装していた、とされます。

 同容疑者は容疑を認めており、大半を競馬に使ったとの報道もあります。何と愚かな・・・。

 社内調査でこの不正が発覚したのは20131月。

 その後、警察への被害申告や警察当局による捜査に協力した上で、今般、社内調査が完了したため」、正式に刑事告発したとしています。

 新聞報道では「総額11億円か」とされていますが、どうもハッキリしません。

 公表資料にも「告発した被害金額は129百万円ですが、今後の捜査の進展により増える可能性があります」としています。

 このコメントが個人的には、かなり疑問です。

 不正の全貌把握を含めた社内調査が十分に終わっていれば、今後の警察や検察の捜査の進展により被害金額は増える可能性は低いはずです。

 会社側としては不本意な受け止め方に見えるかも知れませんが、今般の公表資料を見る限り、「社内調査は終わったけど、あとは警察・検察に委せている」といった他人任せ的な雰囲気を感じ取れます。

 会社の被害の全体像が判明しない限り、社内調査は完了しないと思われるのですが、どうなのでしょうか?社内調査は何をもって完了したのでしょうか?

 もしかしたら、刑事告発を行うことのみを目的として社内調査を行ったのでしょうか?

 仮にそうならば、その社内調査は「会社が被害者である」ことのみを意識している点で問題があります。もちろん、会社が被害者であることは自明ですが、一方で会社は不正を事前に防止し、また適時に発見し、事後的に検証する義務があります。その義務に着目すれば、不正による被害の全貌把握を他人任せにするのではなく、「自ら」調査する必要があるはずなのです。

 会社側の再発防止についてのコメントは以下のとおりです。

 「当社は、かねて「JXグループ行動指針」および「JX日鉱日石金属グループ企業行動規範」の周知徹底を図ってきましたが、今般、このような不正行為が発生したことを厳粛に受け止め、当社グループの経理・会計をはじめとする内部統制体制の強化等により、グループを挙げて再発防止に取り組んでまいります。」

 くどいかも知れませんが、本当に社内調査は完了したのでしょうか?

 いや、「社内調査が完了した」との判断は適切だったのでしょうか?

 仮に、社内調査が不十分であるならば、それに基づいて策定されるだろう再発防止策も不十分なものになりかねません。Taku