住友大阪セメント 在庫の架空計上と売上の期ズレ 2012年2月

住友大阪セメントは、20122月10日、「不適切な会計処理に関する社内調査結果について」を公表しました。 

この資料によれば、同社の新材料事業部高機能フィルム事業グループにおける原価計算および売上計上に関して不適切な会計処理があり、2012年3月期の第2四半期末に与える影響が、総資産で1,479百万円、純資産で940百万円とされています。

  

 その手口は二つの典型的な利益嵩上げ方法でした。

 一つが在庫の過大計上です。

 生産チームの不正実行者(2名)が材料の払い出し数値の過小計上や払い出し先の改竄等により、実際に払い出された在庫を払い出されていないかのように装って、在庫を過大計上していたようです。こうした不正は、棚卸資産の現物と帳簿残高とを照合(実地棚卸)を行い、その差異の原因究明をしていけば明らかになるはずです。

 また、今ひとつが売上計上の早期化です。

 営業担当者(1名)が売上の出荷日を改竄し、売上計上日を前倒しにしていたことが問題視されています。こうした不正は、実際に出荷した日付を示す資料(内部管理上、事前にこれを特定化しておくことが重要です)と入力(又は改竄された)売上データとの照合で判明するはずです。

 

 また本報告書は、本件の不適切な会計処理は会社ぐるみではなく、上記の生産チーム(2名;原価計算の不正担当)、営業担当者(1名;売上計上の不正短答)並びにこれらのグループリーダーの4名によるものと結論付けています。特にグループリーダーが、当該事業の赤字継続が事業からの撤退につながるとのプレッシャーから、これを回避するために部下に指示をしたとのことです。

 

 会社の信頼を大きく損なったこの事件、不正実行者4名の単独行動として、その処分はどの程度のものか、気になるところですが、同報告書は社内処分案として、「4名はいずれも個人的な利得を目的としないものの、就業規則及び労働協約に則り、厳正に処分すべきである」としてます。

 重いのか、軽いのか、これでは分かりません。

 また担当役員の処分はというと、「不適切な会計処理に関与していないものの」が強調されていながら、「強いプレッシャーを与える結果となった事実を考慮すれば、相応の処分をすべき」とされています。

 これもなかなか分かりにくいですね。

 

 今後、上記の社内調査委員会の報告結果を踏まえ、取締役会で社内処分案に関する決議をするようです。 Taku