2012年8月 エドウィンの証券取引損失200億円と経理責任者の不審死

「EDWIN」の由来は知りませんでした。「江戸が勝つ」→「EDWIN」
 聞いたとたんに、些か恥ずかしくなるような駄洒落ですが、ウィキペディアによるとこれは俗説のようで、「DENIM」(綾織り厚地の綿布;ジーンズ(デニム製の衣類))の「E」と「D」とを入れ替えて、加えて、「NIM」を180度回転させて、「EDWIN」となったようです(果たして、これで「由来」の説明になっているのか定かではありません)。
 なるほど、ジーンズの販売会社であるから、「DENIM」を語源としたことは理解できます。しかし、下記の点が明らかにならない限り、「社名の由来」にはならないでしょう。
 ①何故「E」と「D」を入れ替える必要があったのか。
 ②「NIM」を180度回転させる必然性があったのか。
 いや、①②は意地悪な疑問でしょうか。むしろ、もっと単純に「DENIM」という単語をいろいろ弄ってたら格好良い名前ができた、という方が適切なのかも知れません。

 さて、本題に入ります。
 EDWINの不正事件。本社は東京都荒川区。1969年5月設立。
 2012年1月期の決算データは、資本金50百万円、純資産29,870百万円、総資産48,738百万円(同社HPより)でした。上記から、総資産-純資産=負債総額18,867百万円となります。つまり同社の負債は200億円未満でした。
 会社法では、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社について、会計監査人(公認会計士又は監査法人)の監査を義務付けていますが、EDWINは該当しません。会計監査人監査を受けていない以上、残念ながら、同社の決算書は信頼は得られない内容の可能性が高いと思われます。

 2012年8月の報道内容をまとめると、以下の三点に焦点が絞られます。
①EDWIN社グループにおける証券取引を巡って、巨額の損失(200億円超との報道もある)が生じていること
②損失発生に関連して不適切な会計処理が行われた可能性があること
③2012年8月上旬にEDWINグループの経理責任者が急死したこと。
 EDWINグループでは、証券取引やその会計処理等について事実関係の調査を進めており、2012年9月現在は、第三者委員会(弁護士・会計士)の調査が進んでいる状況にあります。今後、平成24年11月を目処に、第三者委員会の調査結果が公表される見込みです。調査結果を見ない限り、何ともコメントできませんが、個人的には以下の点が気になります。
①について
 200億円の損失がデリバティブ取引から生じたとの報道もありますが、同社が会計監査人監査を受けていないとすれば、従前より同社の決算書は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していない箇所があり、これらを含めて会計処理を見直した場合、300億円近くある純資産がマイナスになる(つまり債務超過となる)可能性があります。そうでなくとも、倒産の危機があることは容易に想像ができます。
②について
 亡くなった経理責任者の他に、社長の他、上層部もこうした損失が生じていることを把握していた可能性があります。このことは組織ぐるみの隠蔽工作なのでしょうか、それとも経理責任者のみが秘密裏に不正を行っていたのでしょうか。通常は、これだけ大きな損失が発生する取引を経理責任者が独断で行うことは考えにくく、社長の他、上層部も把握していた可能性が高いと思われるのですが、③でも示すとおり、経理責任者のみに責任が転嫁されてしまう可能性も気になります。
③について
 経理責任者の急死は自殺なのでしょうか、他殺の可能性はないのでしょうか?
 「死人に口なし」といいます。
 少なくとも経理責任者は、不正を主導した可能性のある者、または不正に荷担した可能性のある者に該当します。その方が亡くなっている状況で、真実が明らかにされるのでしょうか。金の動き、帳簿の動き、議事録や稟議書等の意思決定資料の他、証拠資料などから、真実を紡ぎ出すことができるのでしょうか?
 そしてなによりも、第三者委員会が客観的な立場にたって、調査を行い、報告することができるのでしょうか?
 兎にも角にも、平成24年11月に公表される第三者委員会の調査結果、注目しましょう。Taku