不正受給への対峙 生活保護と研究費

 厚生労働省の生活保護不正受給と、文部科学省の大学教員による研究費の不正問題が相次いで報道されました。

 生活保護の不正受給は過去最多で、25,355件(前年度19,726件;5,629件の増加)、12,874百万円(前年度10,214百万円;2,659百万円増加)。また、大学教員による研究費の不正について、少なくとも40の大学・研究機関で、公的な研究資金の不正経理が79百万円あったようです(大学・研究機関の自己申告に基づくもので、今後、金額は増加する模様)。

 行政機関の管轄は異なるものの、いずれも同種の問題です。
また、ニュースを見て「ケシカラン」と思うものの、「やっぱりな」と納得してしまう面もあります。
 これは、「世の中には悪い奴はいるモノだ」という諦めに近い心境に起因していると思います。しかし、「世の中には悪い奴はいるモノだ」と考えていれば、生活保護を支給する側も、研究費を支給する側も、性善説に立つことは許されないはずです。
 「だから、こうした調査をしているのではないか」と胸を張る方もいるのかも知れませんが、現状の対応が十分なのかどうかは定かではありませんしもっともっと改善の余地があると、多くの国民が思っているはずです。
 一般の企業を考えてみましょう。
 事実に基づかない請求書を一般の企業に送りつけて、架空請求をした場合、どれくらいの企業が支払いに応じるでしょうか。一部、のんびりした企業が間違って支払ってくれるかも知れませんが、「これは架空請求だ。支払いに応ずる必要はない」と多くの企業が判断することになるはずです。
 
 一方で、今回問題になった不正受給についてはどうでしょうか。
 推測でモノを言うのは良くありませんが、「こんな発想はなきにしもあらず」と思えて仕方ありません。
「①不正に請求する方が悪い。」そのとおりです。
「②支払った側は被害者だ。」これも、そのとおりでしょう。
「③だから我々は悪くないのだ。」ここは、どうでしょうか?本当でしょうか?

 この③の発想が、不正受給の温床となっていると思うのです。
 もっと真剣に不正受給に対峙すべきだと思うのです。
 騙す方が悪いに決まっていますが、騙された方にも責任がある、という発想を持つことが重要だと思います。
 そのためには、今回のニュースにもあったように不正受給に対する調査を強化することが重要でしょうし、踏み込んだ調査権限を地方自治体に付与することも重要でしょう。研究費の不正受給についても単に自己申告で調査を終わらせるのでなく、部分的にでも大学や研究機関に乗り込んで調査することも必要でしょう。

 不正を思いとどまらせる体制を作ること、「やり得」を許さない仕組みを作ることが望まれます。Taku