違和感3題(オリンパス臨時総会、長崎ストーカー事件、放射能自主基準)

 最近のニュースから、考え方がずいぶんと異なるものだと思えた事例を3つ。組織内にいると通常見えることも見えなくなるのかもしれません。 


(オリンパス臨時株主総会)

 4月20日、オリンパスの臨時株主総会が開催されました。提出議案通り新たに取締役11名、監査役4名が選任され、現役員は全員退陣しました。株主総会は3時間近くにおよび、その質疑応答は「オリンパス株主総会ライブ(1)~(8)」(SankeiBiz)にて詳しく報道されています。

 それによりますと、取締役と監査役の責任を問う質問は、不正取引に関するものばかりで、ジャイラス社等の買収事案に関し、監査役も含めて取締役会が機能していたかについての追求はありませんでした。残念でなりません。第三者委員会もこの点については守備範囲外であったのか、触れていませんでした。取締役会が自分の専門以外は口をつぐむ体質であったことや不作為の責任については、明らかにされないまま幕が下ろされてしまいました(「オリンパス -アルティス社買収時の株主価値算定報告書と経営責任-」2011/11/1)。

 新任取締役の選定理由に関する書面質問に対し鈴木取締役は、「役員の善管注意義務に基づき株主重視の経営をすすめてもらえる」、「組織体制を改め執行と監督を分離し機能することで事業執行は心配なく、経営に安定感を作り出す」と回答しました。取締役会において重要事項が議論されるようになるかは、組織体制に加え、運営方法も重要な要素です。活発な議論が行われる組織を是非作っていただきたいものです。

 

(放射能自主基準値への自粛要請)

 20日、農林水産省は食品産業の団体に宛てて、「過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため、法の基準値に基づき判断するよう周知をお願いしたい」という通知を発信しました(「東日本大震災について~食品中の放射性物質に係る自主検査への対応に関する通知の発出について~」)。これに対して、消費者に安全・安心な食品を提供するという立場から反発があがり、鹿野農水大臣は「いろいろな取り組みを否定するもではない」などと弁明に追われているようです。

 国が定めた基準を守りさえすればよいというのであれば、減農薬や無農薬の農産物については、どのような取り扱いとなるのでしょうか。食品に限らず、労働環境、製品の製造において法律の基準以上に厳しい安全基準を設けている例はたくさんあります。それを過剰規制とは、決して言いません。基準さえ守ればよいのであって、法律の規制以上のことを許さないと国が言えば、反発を受けるどころか、非難の嵐に見舞われるのは必至です。法律基準以上の独自基準を否定する論理に普遍性がないことは、明らかです。

福島支援のためにその数値を明示した上、基準値以下なら取り扱いをお願いしたい、という要請なら理解できます。そうではなく、このような普遍性のない通知が発せられてしまうことに、組織の病弊の重さを思わざるを得ません。


(長崎ストーカー事件と慰安旅行)

 長崎ストーカー事件について千葉県警本部長が再検証結果として、「旅行に参加していなければ、9日の時点で逮捕や同法の警告など踏み込んだ対応ができた」と報告したとのこと(msn産経ニュース)。報道も警察も、慰安旅行に行ったことが問題と、とらえているようです。切迫性を把握できなかったこと、さらには市民を守ることへの希薄性こそが問題なのに、論理をすりかえているように思えてなりません。警察官も休みを取ることもあれば、慰安旅行にも行くでしょう。そのとき、どのように引き継ぎを行うかが、本事件からの教訓の一つとなるべきです。本部のストーカー対策担当者9人も慰安旅行に参加をしたことにも記事となっていますが、同一部署の全員が参加したのか否かはわかりません。

 傷害事件の被害届を1週間遅らせるよう依頼したとする刑事課係長の判断がは、どのような事実認識に基づいていたのか、ストーカー事件に対する警察署の認識のあり方は桶川事件以降から変わっているのか、等々の本質的問題に踏み込まず、慰安旅行があったという表面的な事象で納得しているのであれば、教訓も再発防止策も得られないままとなるでしょう。


Tetsu