沖電気海外連結子会社不適切な会計処理に関する調査報告書についての感想

9月26日に紹介した沖電気の海外子会社に係る適切な会処理に関する外部調査委員会調査報告書を読んでの感想です。要約版であるせいか、理解に苦しむ点が多々ありました。


1.わからないこと

まず、わからなかったのが、調査報告書での純資産への影響額マイナス153億円の大半を占める売上・売掛金の取消による125億円のマイナスです。本文ではこれを売掛金の回収期限の延長の問題として取り上げています。売上を取消し、新たにインボイスを発行して売上を計上するわけですから、利益への影響はないはずという思いこみが強く、これを実体が伴わない売上・売掛金というだけの理由で取り消してしまうのかが、なかなか理解できませんでした。報告書には本売掛金リストを入手し、次の手続を行って、影響額を算定したとあります。

ア. 本売掛金リストの取引残高から20%程度を抽出し、出荷や入金を示す証憑類が存在しないことを検証

イ.帳簿に計上されている売掛金のうち、本売掛金リストに記録されている取引残高を除いた売掛金の20%程度を抽出し、出荷又は入金を示す証憑類が存在することを検証

ウ.本売掛金リストに含まれていない売上・売掛金の取消の特定

 

手続から察するに「本売掛金リスト」とは、出荷や入金事実のない売掛金の一覧表であり、本文で指摘している「実体を伴わない売掛金」を帳簿から抽出したもののようです。

結局のところ、この取消・売上の計上を繰り返したことで当初のインボイスがわからず、請求不能と判断したことにより、実体を伴わない売上・売掛金を取り消すのだろうと、推測しました。しかし、なぜ売上・売掛金だけを取消し、売上原価は取り消さないのか、また20%程度による検証の信頼度係数はいかほどなのか、と疑問はつきません。
報告書に指摘されたことをもって、影響額として会社は全額計上していますが、会社としてなすべきは、第一に本来のインボイスを明らかにし、回収を図り、損失をできる限り削減することです。また、取消すのであれば売却した商品を取り戻し、販売に供しなければなりません。報告書での指摘は単に「不適切でないことを積極的に証明する証拠がない売掛金」(報告書の文言です)につき全額債権放棄せよと言うのに等しく、回収はあきらめてしまっているようです。また、会社も調査する気はないようです。繰り返しますが、本来これらの売掛金は備忘価額で帳簿に残した上で、回収を図らなければならないものです。調査で判明・回収できる金額より、調査費用の方が高い等の回収を図らない合理的理由があればまだしも、ただ「実体を伴わない売上・売掛金」を全額取消して影響額として発表することは、株主・投資家への説明不足としか言いようがありません。

 

2.株価について考えてみた

本件は8月8日の引け後に発表されました。当日の終値は122円、発表翌日9日は最安値がストップ安の72円、その後盛り返して終値は81円でした。その後、終値ベースで公表日の9月11日には100円にまで回復し、公表した翌日の終値は89円と下がった後、26日の株価は91円と90円辺りで推移しています。純資産が4割近く減少したことにほぼ見合った価格形成といえます。当期見込み利益が変更はなく、キャッシュ・フローへの影響は少なかったことをみると、株価のキャッシュフローとの連動性は高くないと考えられます。企業価値は金の卵を産むガチョウの値段と同じく、将来生み出すキャッシュフローによる、というのが通説ですが、1株当たり純資産やPBR(株価純資産倍率)も大きな影響をもつ、ということを物語っているのでしょう。

                                             Tetsu

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