不正のトライアングル 

先日、昔見た「麻雀放浪記」という映画を改めて見る機会がありました。

阿佐田哲也氏の原作も昔、読みました。

原作を読んだ上で映画を見ると、良くがっかりするケースが多いのですが、この映画は別格です。何しろ配役が素晴らしい。加賀まりこさん、綺麗です。

 さて、私は麻雀をほとんどやりませんが、映画を見て、「不正のトライアングル理論」を思い浮かべました。これは20世紀半ばのアメリカの社会学者(犯罪心理)クレッシーが提唱した有名な理論で、広く一般的に採用されています。この理論では、不正リスク要因を(動機・プレッシャー、機会、姿勢・正当化)の三つに区分して、この三つが揃わないと不正が起きないと考えます。

例えば、会社財産の私的な流用の場合、その不正実行者には、例えば以下のような不正リスク要因があったこと考えられます。

    借金の返済に負われて何とかお金が欲しかったという「動機」、お金がないとどうしようもないと言う「プレッシャー」

    管理体制の不備等、私的流用を可能にする「機会」

    少額の窃盗に寛容な経営者の「姿勢」や、悪いことと知りながら「一時的に借りるだけ、後で返すから」といった自分への「正当化」

麻雀放浪記でも、イカサマが横行します。

「ツバメ返し」やら「ニのニの天和」など、私もあまり詳しくないのですが、こうしたイカサマでも、やっぱりクレッシーの不正のトライアングル理論に合致します。

負け続けると身ぐるみをはがされるという「動機」や「プレッシャー」の中で、相手の見ていない「機会」を伺いながら、「どうせみんなイカサマをしているだろう」「俺だってイカサマしてやる」という「姿勢、正当化」が横行しているのです。

どうでも良い話ですが、私が最も印象に残っているシーンは、最後の最後、上州虎を演ずる名古屋章が人差し指を曲げて立てるシーンです。盗みでもして麻雀をするためのお金を稼いできたのでしょう。手が付けられないほどの悪人振りです。

 さて、「動機・プレッシャー」が内面に関する問題であって、外部からコントロールが困難である以上、「機会」、や「姿勢・正当化」といった点に着目して、不正防止のための管理体制を構築するべきなのでしょう。

例えば、特定の従業員に委せきりにすれば「不正発生の機会」になるでしょうし、経営者のモラルが低ければ「不正を許容する姿勢・正当化」になります。個人的には、「不正は絶対許さない」という経営者の姿勢こそが重要で、この姿勢が組織内に浸透すると、必然的に不正の機会を減らすような管理体制が構築されると考えます。

まずは、経営者自身が不正にどのように対峙しているのかを示すことが肝要なのです。

ある調査では、社長が営業マンに、「売上を上げろ!」と伝えるのと、「売上を上げろ!でも不正はダメだぞ!」と伝えるのとでは、後者の方が不正の発生可能性は断然に低くなるそうです。

経営者の影響力は、本当に絶大ですね。参考まで。Taku