2014年4月、株式会社太陽商会は「不適切な会計処理についての報告」を公表しました。同社は、国内で唯一の「セールスプロデュース」を手がける名証セントレックス上場会社です(旧Now Loading)。
同社の業績(連結経営指標)は、2012年3月期に債務超過(純資産△42百万円)となり、その翌年の2013年3月期に利益50百万円を計上することで債務超過を回避(同年末の純資産+7百万円)したことになりました。
しかし、実は上記報告書にあるとおり、同社は2013年3月期の売上76百万円、当期純利益及び純資産それぞれ38百万円を過大計上していたので、修正後の純資産は△30百万円となり、二期連続の債務超過に該当します。
一般に「二期連続債務超過」は上場廃止基準に該当します(セントレックスも同様です)。
そのため、本事例では同社の上場廃止の可能性が問題となるわけですが、いろいろと同社の公表資料を見ていくと、同社は単に債務超過だけが問題となっているわけではありませんでした。その詳細は次回検討しますが、今回は、やや趣味の悪い検討の方法かもしれませんが、同社の株価の動きと同社の公表した資料との関連を検討します。
なお、同社は2014年3月31日を基準日として、1株を100株に分割していますが、以下の株価は調整後(分割後)で示します。
1.年初来高値
2014年の同社の年初来高値は2014年2/24の439円(同日終値423円)です。
その10日前、2/14に同社は3四半期の短信を公表し、2013年12月末時点で債務超過△32百万円としている一方で、2/19に代表取締役代表が会社を買収し、「連結子会社の異動の見込みに関するお知らせ」を公表しています。これが好感されたのか、2/19の終値278円から2/24の439円まで一気に株価は上昇したのです。
2.株価の下落と上昇
その後、株価は下落を続け3/4に285円となりますが、3/6に374円まで急上昇します。その原因が3/5に同社が公表した「株式分割」です。上記にも示しましたが、1株を100株に分割することを公表した結果、一気に株価が上昇したのです。
至極当然の話ですが、株式が分割されたからと言っても、簡単に言えば「1万円札1枚か100円玉100枚か」の相違に過ぎませんから、理論的な株価が変わるわけではありません。しかし株価はそうした理屈よりも、「株式分割」=「所有株数増加」=「好材料」=「買いが入る」=「値が上がる」という思惑が重要なのでしょう。
3.ストップ安
その後、一進一退の同社の株価は3/11の終値385円から、ストップ安を挟みながら、一気に3/18の107円に急落します。これが冒頭に掲げた「不適切な会計処理についての報告」に関連しますが、3/11に「不適切な会計処理の判明について」及び「当社株式の管理銘柄(審査中)の指定に関するお知らせ」が公表されたことに起因した株価の急落です。
同社の株はその後も多少の動き(4/7に一時的に200円を超える場面も)ありましたが、ズルズルと下がり続けます。
4.現在の株価
その後、株価は多少の動きはありますが、2014年5月14日現在の終値が66円(本日の出来高が11,700株=取引総額772千円)です。
上記に関連して個人的に興味を覚えるのは、同社の不適切な会計処理(売上の過大計上)そのものよりも、証券取引所の対応(上場廃止の判断)と、上記の株価の推移に見られる売買関係者の思惑です。会社の公表する資料一つ一つに市場が敏感に反応して株価が形成される現実があるのです。その会社は、上場廃止のリスクと背中合わせにあって、その株式は監理銘柄とはいえ、市場で平然と売買されている現実に「ババヌキ」に似たスリルを感じざるを得ません。もしかしたらそのリスクは、三競オート(競馬、競輪、競艇、オートレース)に賭けるスリルと同じなのかもしれません。
「きれいごと言うな。」「株がギャンブルでなければ何なんだ。」
との指摘も容易に想定できますが、いやいや、そんなことはないでしょう。
証券市場とギャンブルとが同じだなんて、乱暴な議論です。
証券市場の健全な発展が、日本経済の基盤であることは疑いの余地はありません。果たして本事例は、日本経済の基盤である証券市場に大きな疑念をもたらしていると懸念します。Taku