2014年6月 「第三者委員会報告書格付け委員会」の評価結果について(その1)

 企業に不祥事が発生した場合、その全容を明らかにすること等を目的として「第三者委員会」が設置されることがあります。しかし、第三者委員会の報告書の中には、「第三者」とは名ばかりで、不祥事発生時の経営陣の責任を回避・隠蔽することを主眼として作成・公表されている(又はそのように見受けられる)第三者委員会報告書が存在することも事実です。
 そこで「第三者委員会報告書格付け委員会は、上記の実態を問題視し、著名な弁護士等が「第三者委員会等の調査報告書を『格付け』して公表することにより、調査に規律をもたらし、第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めること」を目的として、評価結果を公表することとしています。
 20145月には、第1回目(今後3ヶ月ごとに3年間、計12回の格付けを行う予定)の評価結果として、みずほ銀行の反社会的勢力との関係が問題視された「提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会の調査報告書についての評価結果が公表されました。
 上記の事件は、マスコミでも相当に話題となりましたし、当不正事例研究会でもTetsu氏が取り上げました(詳細は「こちら」)。
 今回は、そのみずほ銀行の反社会的勢力に関する事件そのものではなく、上記の「格付け委員会の評価結果に対する個人的な感想を示します。

1.総合評価の結果が厳しすぎる。
 私個人としては、上記の調査報告書は、短い調査期間(20日間)の中で、みずほ銀行と反社会的勢力との関係が放置された経緯が詳細に記述されており、社会的に大変意義のあるものと評価していました。特に加熱したマスコミ報道の中で偏向のない適時な情報として、その調査報告書は有用でした。
 しかし格付け委員会では、A~Dの4段階評価(評価に値しない報告書は「F(不合格)」)とする評価方法の下で、上記のみずほ銀行の調査報告書に対しては、Cが4名、Dが4名(合計8名の評価委員の評価結果)でした。かなり厳しい評価結果です。
 これほどに厳しい評価結果となるのは、どうも腑に落ちません。
 逆にこうした厳し過ぎる評価では、調査報告書の記載内容そのものに信頼性がないかのような疑いを与えかねません。各委員の個別評価の詳細を読めば、必ずしも調査報告書の全体を否定するほどの評価結果ではないのですが、総合評価として最低位(4段階の4番目)とすれば、「みずほの第三者委員会の調査結果は信頼性なし」と安易に受け止められてしまうことが危惧されます。
 格付け委員会の目的が「報告書の社会的信用を高めること」にあることは理解しますが、厳しすぎる評価結果によって、その目的が達成されなくなる可能性が気になります。

2.評価の基準が主観的に過ぎる。
 評価結果について部分的な揚げ足取りをするつもりはありませんが、各委員の個別評価の記載の中には、以下の記述が含まれています。
 「『今後』設置される第三者委員会への警鐘の意味を込めてDと評価する」
 「格付けの『初回』からハードルを下げないと言う意を込めてDとした」
 そもそもA~Dの評価基準も明確に示されていませんし、その上「1回目の格付けだから厳しく評価する」という理由も、理解に苦しみます。当然に2回目以降の評価基準(ないしは評価感覚)は、1回目と変更がある(あるいは偏向がある)ことになりそうです。こうした主観的な評価結果は、評価された側の第三者委員会としては受け入れ難いことが容易に想像ができます。
 また、別々の委員が「調査期間が短すぎる」と、「精力的な調査が行われたことが伺える」といった別々の評価を行っていますが、これは「調査期間が20日間」という情報のみに基づく主観的判断に過ぎません。
 実際にどれだけの優秀な人員が、一日にどれだけの時間をかけたのか分からない以上、「短い」か「精力的か」判断できるはずはないのです。
 さらに最たるものは、「D評価の理由は、報告書に通底する『志の低さ』にある。」とされては、短時間に鋭意努力して調査報告書を作成しただろう第三者委員会としては二の句が継げないかも知れません。
 上記はごく一部としても、実際の評価結果を見てもらえば、8名の評価委員の見解が、形式上も統一感もなく示されていることが分かります。
 確かに、著名であって権威のある方々の見解が公表されているのですから、一人一人のご意見を有り難く拝見したいところなのですが、その著名さと権威に起因してか、又は、その評価結果の厳しさと主観的な判断に起因してか、当該評価結果が「価値観の押しつけ」のように見えてしまうのです(もしかしたら、著名でもなく、また社会的な権威もない私個人の「ひがみ」に過ぎないのかもしれませんが)。

 長くなりそうです。
 今回はこれくらいにして、次回は、以下の項目について検討します。
3.ボランティアの無責任性
4.誰のための第三者委員会報告書格付け委員会なのか? Taku