第三者委員会報告書格付け委員会の評価結果について(その2)

第三者委員会報告書格付け委員会は、20145月に、第1回目の評価結果として、みずほ銀行の反社会的勢力との関係が問題視された「提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会の調査報告書

に関する調査結果を公表しました。
 前回は、その「格付け委員会の評価結果に対する個人的な感想として、
1.総合評価の結果が厳しすぎる。
2.評価の基準が主観的に過ぎる。
 と示しました。「その詳細は前回指摘の通り」ですが、今回はその続きです。

3.ボランティアの無責任性
 格付け委員会の運営は、「すべて委員による寄附で賄う」としています。
 なるほど、第三者委員会から報酬を収受しないことで、格付け委員会の客観性が担保されることでしょう。しかし、こうした格付けが「ボランティア」で行われていることには注目に値します。
 例えば、調査報告書の作成者である第三者委員会が依頼主となって、格付け委員会が、その第三者委員会から報酬を貰った上で、「第三者委員会の作成した調査報告書は適正である」という意見を表明することとした場合は、どうでしょうか。
 その意見表明のためには、格付け委員会は、第三者委員会の委員に対するインタビューをはじめ、第三者委員会の行った調査内容について、その人員、時間、範囲、方法を検討し、その調査結果等の検証を通じて、「慎重に」第三者委員会の作成した調査報告書が適正かどうか判断することになるでしょう。
 こうした業務は、まさに公認会計士による保証業務と同様で、もはや「ボランティア」のような無責任な意見表明は許されません。この場合、格付け委員会は、責任ある業務を遂行するため、第三者委員会に対して相応の報酬を求めることになるでしょうし、その調査報告書の利用者に対しても無責任な発言は慎むことになるでしょう。
 このように報酬を貰う立場にあればこそ、格付け委員会の第三者委員会に対する「独立性」に関する慎重な配慮が必要になるのです(逆に言えば、格付け委員会が無報酬である以上、独立性に対する配慮の必要性は相対的に低くなるでしょう。)
 一方で、この格付け委員会の評価結果はどうでしょうか?
 ボランティアであるが故、「何を言ってもOK」という雰囲気があることは否めません。実際に調査対象者である第三者委員会に対する敬意・配慮が感じられない記述も散見されます。
 第三者委員会に対するインタビューも実施せず、公表された調査結果のみに基づいて、個人的な見解を一方的に述べている(又はそのように見受けられる)のでは、私のブログやホームページと同じで、必ずしも信頼を得られないと思うのです。

 蛇足になると不本意ですが、少なくとも保証業務や監査業務に精通した「公認会計士」であれば、評価基準が曖昧な業務については、「保証業務の定義を満たさない」として、こうした保証業務と誤解される可能性のある「格付け」業務の受嘱には抵抗感を覚えたことでしょう。ただし、本格付け委員会は、保証業務に精通していない弁護士等が中心なので、上記の慎重な判断を行うことができなかったことは、一概に批判の対象にすることはできないでしょう。
 
4.誰のための第三者委員会報告書格付け委員会なのか?
 格付け委員会の評価結果を見る限り、彼らの視線は、第三者委員会そのものに向けられていると感じます(この点は、日弁連が公表している「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」も同様と考えます)。
 格付け委員会の目的が「第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めること」にあれば、彼らは、第三者委員会だけでなく、信用を付与する「報告書の利用者」に対しても視線を向けることも必要かもしれません。
 第三者委員会に対して「報告書はかくして作成するべし」と権威を持って迫ることと、報告書利用者に対して「報告書はかくして利用すべし」と膝を曲げて啓蒙することは、上記の目的達成に関して同様の効果をもたらすと考えます。個人的には、前者が強権的であるのに対して、後者は教育的であるため、後者のほうが建設的と考えられ、より有効な手法ではないかと考えます。
 権威ある団体が第三者委員会の報告書に「直接的に」もの申すだけでなく、「第三者委員会の報告書を利用する際の注意点」を「間接的に」公表することで、第三者委員会にとっては報告書を作成する際の指針となるでしょう。また、公表された第三者委員会報告書を利用する側にとっても、その報告書が「信用できるか」、「受容できるか」等について、それぞれの立場で判断することが可能になるでしょう。
 
 折角、著名な権威のある方々が作業されているにもかかわらず、社会的に受け入れられない、又は批判の対象となるのでは、なんとも勿体ない話に思えて仕方ありません。

 最後に、第三者委員会の報告書について格付けを行うのであれば、細かい指摘は極力避けて、「信頼性があるか」「受容できるレベルか」といった大局的な評価に留めた方が有用と思われるのですが、いかがでしょうか?Taku