2014年8月 木曽路の牛肉 メニュー誤表示

 2014年8月株式会社木曽路は、「メニュー表示と異なった食材を使用していたことに関するお詫びとお知らせ」を公表しました。きっかけは社内調査によるとされ、一部報道では、仕入数量と売上数量との矛盾から発覚したとされます。
 銘柄牛(松阪牛、佐賀牛)仕入数量よりも、販売数量の方が多ければ、当然に「別の肉を出した」ということになるでしょう。

 

 しかし、この怒りはなんでしょうか?

 

 中国の故事「羊頭狗肉」というほどに大げさな話でもなく、また最近話題になった賞味期限切れのカビの生えた肉が提供されたわけでもなく、さらに提供された肉は銘柄牛ではないにしても、きっと美味しい霜降和牛だったはずです。それでも、こうしたメニュー表示と異なった食材が使用されたことに対する怒りが、とても大きいのは何故でしょうか?
 むしろ、「知らない方が良かった」とさえ思ってしまうこの事件、その怒りの原因について考えてみました。

 

・「どうせバレないだろう」という騙す側の「ずるさ」が腹立たしい。
 客を馬鹿にしている態度が怒りの根本的な原因でしょう。自分が「どうせ味の違いなんか分かるまい」という思われていることと、店側の「騙して儲けてやろう」という意向とが相俟って、「客を騙して金を詐取する」という店側の悪質さが強調されていくのでしょう。

 

・名の通ったブランドがある分、怒りが増幅する。
 見るからに悪そうな人が悪事を働いても「やっぱりな」「こちらも気をつけなきゃイカン」と考え、その人に対する怒りは大きくならないこともありますが、有名な料亭や高級ホテルに加え、こうした名の通った店の場合、「真面目な人が悪事をした」という驚きのある分、怒りが増幅するのかもしれません。信じていた自分に対する怒りが加わっているのでしょうか。

 

・各店舗が独断でやっていたいというのは「言い訳」なのか?
 「本社は知らなかった」「各店舗の判断で行っていた」ということが、さも「いいわけ」「釈明」であるかのように話す責任者のインタビューにも大きな疑問があります。これだけ食に対する意識の高まりのある社会情勢の中で、当然に起きうる事態であることは容易に想定できたはずでしょう。そのリスクの顕在化に対処するのが責任者の役割なのですから、「知らなかった」では済まないのです。むしろ、知らなかったこと自体が責任問題なのですが、どうもそのことが理解されていないようで、歯がゆい思いがします(あくまで一般論ですが、売上高から食材の標準消費量を算出して、実際の食材の消費量と比較することは、飲食店を管理する上での基本と思われます)。

 

・お客様の「思い出の食事」に泥を塗ったことへの怒り
 「今日は○○記念日だから、奮発して、佐賀牛にしよう!」
 「残念だったな。でもこれからガンバレ!今日は松阪牛だ。これ食べて元気出せ!」
 食事は人のコミュニケーションを円滑にし、家族、友人、恋人等、大切な人との間での思い出にもなります。
 問題となった誤メニューの販売数量は、木曽路の北新地店で、2012年4月~2014年7月で6,880食だったそうです。これだけ多くの食事が「嘘だった」ことになります。お客様の思い出まで嘘だったことになりかねません。。

 

 きっと、一昔前なら組織内部で揉み消されていた事件でしょう。正直に公表したこと自体は悪いことではありません。
 しかし、お客様の「思い出」に泥を塗ってしまった彼らの責任は相当重いことでしょう。Taku