【予告】財務諸表監査の実務 発刊予定

 公認会計士試験の受験者向けの「監査理論」を扱った学者の書籍は少なからず市販されており、また大手監査法人の監修した実務家向けの「会計分野の専門書」も数多く目にする。内部監査や監査役監査、システム監査等、種々の監査に関係する書籍も珍しくはない。しかし「財務諸表監査の実務」に焦点を絞った書籍は意外と少ないのである。特に、「具体的に財務諸表監査はどのように行われるのか」を扱った書籍は、「現在、市販されていない」といっても過言ではないだろう。
 「公認会計士試験には合格したのですが、監査実務の経験に入る前に何か読んでおくべき書籍はありませんか?」
 この質問に対して、自信を持って推奨できる書籍は、残念ながら無かった。
 かくいう私は、公認会計士試験に合格後、「勘定科目別にみた異常点監査の手法」(中央経済社;昭和609月;野々川幸夫氏)を熟読し、中堅監査法人での監査実践にて、監査実務のあるべき姿を探求したものである。その後、上記書籍は平成13年に「異常点監査の実務」として集大成され、公認会計士業界の名著として読み継がれ、語り継がれてきた。しかし大変残念なことに、この書籍は既に絶版となっている。また、その後の平成14年の監査基準の改訂による継続企業の前提に係る新たな議論、平成17年の事業上のリスク等を重視したリスク・アプローチの導入、さらに平成23年の新起草方針に基づく監査基準委員会報告書の大幅な改正(クラリティ版への改訂)等、当時と比べて監査環境は大きく変化している。
 「冒頭の質問に耐えうる書籍はないものか?」という問いを続けていくうちに、「そうした書籍を執筆しよう」との意志が芽生えた。長年お世話になった出身母体の監査法人の東京事務所長に監修を願ったところ、「監修ではなく、私こそ書きたい。」「是非、一緒に執筆しよう。」との快諾を頂いた。また、膨大な執筆作業、校正作業等を想定して、監査法人時代の後輩を巻き込んだ上で、本書の執筆活動が始まったのである。
 執筆が進み、内容が充実していくにつれて、これは「単に公認会計士試験合格者のためのだけの書籍ではない」との確信が得られる。長年、監査実務に従事していない先生方や、公認会計士監査の対応を行う企業の経理担当の方にとっても、「昨今の財務諸表監査の実務はどのように行われるか?」を具体的に示す本書は有用であるに違いない。
 また、社会一般には「公認会計士はどんな資格か」という疑問を持たれている方も多いが、端的に言えば「公認会計士は『監査』を行うことができる資格」である。やや欲張ったモノ言いとなるが、「監査の具体例」を示す本書の出版により、公認会計士という職業や財務諸表監査の意義を社会一般に敷衍する効果も期待できるのである。
 
 早いもので原稿執筆開始から1年半が経過し、漸く、初校、再校と作業は進んでいる。
 今後は年末年始に最終校正を経て、20151月下旬か2月上旬には、世に出る予定である。しかし、何らかの要因でストップがかかる可能性も否定できない。まだ予断は許されないが、何とか出版にこぎ着けたいと考えている。出版の暁には、きっと上記のような「はじめに」(又は「おわりに」)を記すことになるだろう。Taku