「想定外」はいつまで続くのか-センター試験トラブルと放射能汚染マンション-

 昨日、終了した大学センター入試試験では過去最高のトラブルがあり、4,500人の受験生に影響が出たという、報道がありました。 今回のトラブルは、2科目を同時に配る問題を1科目のみ配布したり、英語のリスニング機器が会場になかったりといったものでした。これに対し大学入試センターの理事長は陳謝しましたが、センター自身の責任は認めていないこと(毎日)、各大学の試験担当者4人を集めて8月と12月の2回、今回の制度の特徴を説明し、またマニュアルを作成して、全試験官に行き渡るよう指導していたこと(産経)、鹿児島純心女子大(鹿児島県薩摩川内市)は、試験前に研修会を5回開き、うち2回は冊子の配布方法を指導したこと(毎日)などが、報道されています。
 「トラブルの原因は準備不足に尽きる」
 と思うのが普通の感覚でしょう。大学からは「マニュアル通りに配ったら、時間がずれこんだ」という報道もあり、唖然とするばかりです。 入試実施準備に当たって、予行演習をすればどのくらいの時間が必要かわかるはずです。 研修を実施してそれでこと足りるとするセンター側だけでなく、入試を実施する大学側までもが、具体的に考えて行動することを蔑ろにしているとしか思えません。 新しい方式であるなら、実施上の問題点がどこに潜むかは、予行演習を実施すればわかります。 それを怠って「不慣れでした」と言って済ましているのなら、問題はこの先もずっと解決しないでしょう。
 一方、福島県二本松市では、昨年7月に完成した同市内マンションの室内で屋外より高い毎時1マイクロシーベルトを超える放射線量が検出された、との報道がありました。年間では約9ミリシーベルトの被爆。食品の放射線量暫定基準値の前提とされる年間5ミリシーベルト(4月から適用される新基準の前提は1ミリシーベルト)を超える数値です。
 建材の流通などを所管する経済産業省は、次のように話しています(NHK(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120115/t10015282731000.html))。 今回のような砕石場の石の出荷については、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降も、放射性物質などの基準は設けておらず、業者への指導などは行っていないということです。これについて経済産業省は「砕石場では山の表面だけを削り取るわけではないので高い放射線量が測定されることは想定していなかった」。
 昨年7月に牛肉から暫定規制値を超える放射線セシウムが検出され、屋外の稲わらがその原因とわかった事件がありました。そのとき農林水産省は3月19日は通知を発していたとしながらも、放射能汚染された稲わらが、畜産用飼料として北海道から島根県にいたるまで16道県で使われていたことには、想定外としていました。  稲わらが汚染されているのであれば、外で保管されているものは汚染されている可能性を検討する必要があるでしょう。特に「石」という特質上、一般には風雨にさらされて保管されることは容易に想像できるはずです。  「想定外」という用語が安易に、無責任に使用されている気がしてなりません。 容易に想定できることを想定しなかった責任が問われるべきでしょう。 これ以降、同様の事件が生じても、やはり「そこまで影響があったとは、想定外でした」との公僕のコメントが、それこそ「想定」されるのです。 不正事例研究会では、せめて過去に起きた事件と同様の事件は起きないよう、情報を発信していきます。

Tetsu