東理ホールディングス 不適切な会計処理の可能性 2012年2月

 2012年2月、東理ホールディングスは、「不適切な会計処理の可能性についての社内調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。

 同報告書によると、過去の貸付金等の会計処理等について、一部不適切だった可能性があるようです。同報告書で示している調査事項は主な内容は以下の通りです。


1. 取締役経験者に対する貸付金
・2007年10月~2009年2月の間に貸し付けた合計930百万円
・2007年11月に貸付けた156百万円
・2007年7月~2008年1の間に貸し付けたエス・サイエンス株式4,700万株
2.2009年9月~2010年9月の間、個人に貸し付けた155百万円
3.2007年5月に投資事業組合に支払った増資費用の前渡金300百万円

 

 なお、1の貸付残高については2010年3月期末に、2の貸付残高については2009年3月末に、3の前渡金については2008年3月末に、それぞれ全額に対して貸倒引当金を計上しているようです。
 会計処理上の問題としては、貸付や増資費用の支払い事実そのものでなく、その評価の妥当性(回収可能性や支払に相当する財・サービスの提供を受けているかどうか)が問題視されます。この点、会計処理上は既に全額貸倒引当金を計上している以上、特に業績には影響を与えないと同報告書はコメントしています(もちろん貸倒引当金を計上するタイミングの妥当性は問題視されるでしょうが、本件で最も重視すべき問題ではなさそうです)。

 

 本件で最も重視すべき問題は、上記の「会計処理上の問題」ではなくて、「なぜこうした貸付や前渡金の支払いを行ったのか?」ということで、「そうした貸付や前渡金が必要だったのか」という問題です。
 同報告書でも「コンプライアンス」や「ガバナンス上の問題」、「再発防止のためのコーポレート・ガバナンス体制の確認」を調査事項に含めていますが、これらに調査事項に焦点を当てるとするならば、「不適切な会計処理の可能性」でなく、「不適切な貸付等の可能性」という適時開示資料の表題とした方が、適切ではないかったのか?と考えました。

 

 ちなみに同社は2010年3月期の内部統制報告書上、「重要な欠陥(現在は「開示すべき重要な不備」)があるとしており、その理由の一部として下記の記述があります。
「全社的な内部統制及び決算財務報告プロセスにおけるチェック項目、チェック体制が不十分であったことに起因しております。旧代表取締役の強い圧力の下、いずれも当該判断を支える事実関係についての十分な実態調査を行なわなかったことが表面的な原因でありますが、経営者のコンプライアンス意識の脆弱さ及び取締役会・監査役会のガバナンスが機能していなかったことが根本的な原因であります。」

 

 この内部統制上の問題と、今回の「不適切な会計処理の可能性」との関連性は確かではありません。

 なお、2011年3月期の内部統制報告書では、上記の開示すべき重要な不備は是正されています。
 いずれにしても会社に多大な損害を与えたように見える上記意思決定プロセスの適法性について、今後の調査結果に注目したいと思います。Taku