2012年7月 ソリトンシステムズ 経営管理部長不正

  ネットワーク機器、セキュリティ製品の開発、販売を行うソリトンシステムズ(JASDAQ)は、元社員(元執行役員 経営管理部長)が、不正に当社の銀行口座から 170 百万円を引出し、着服したことを発表しました。会社はこの元社員に対し、当該執行役員の職を解任し、懲戒解雇処分を決定しています。また、法的責任追及に関しては、刑事告訴を念頭に対応を協議中とされ、現在、金額を含め、内容の詳細を調査中とのことです。
 この事件は驚きました。

 

 第一に不正実行者の役職です。
 「経営管理部長」といえば、一般的には企業内容開示に係る責任者として、また社長の右腕として位置づけられるような相当な権限が付与されている役職です。当然に銀行の届出印の使用権限も付与されているでしょうから、これを不正使用して会社の資金を着服することくらい「やろうと思えば」容易なことです。
 しかし、そうした立場にある人間は通常、相当な責任意識の持ち主であって、相応の実力や会社への貢献、社長他、従業員からの信頼があるのが一般的です。当然に「そんな不正をしたら、直ちに発覚する」ということは、十二分に理解しているはずですから、「やろうと思わない」のが通常です(不謹慎かも知れませんが、もしこうした不正を行う覚悟があるなら、発覚した時点では不正実行者は行方不明になる方が、犯罪心理的には自然なことなのかも知れません)。

 

 第二に不正発覚のタイミングです。
 ソリトンシステムズは3月決算ですから、2012年3月の決算に関して、6月下旬は株主総会開催、監査法人の監査報告書の提出、有価証券報告書及び内部統制報告書の提出といった重要事項の目白押しの時期です。不正が発覚したのは、これらが全て完了した2012年6月29日なのです。

 

「もう少し早く気が付かなかったのか?」
「実のところは気が付いていたのではないか?」
「監査人の後発事象のチェックは十分だったか?」

 

 そんな多方面に大きな疑問が沸く、とても厄介な時期(逆に言えば、絶妙のタイミング)に不正が発覚したのです。

 上記二つ不正実行者の役職と不正発覚のタイミングの不自然さに鑑みれば、もしかしたら、この経営管理部長は、発覚することを知りつつ(又は発覚するだろうタイミングまで見計りつつ)、この不正を行ったのではないかと勘繰ってしまいます。
「何のために?」 
 経営管理部長が、会社に対して何か大きな不満があったのか、納得行かないことがあったのか?
 当然、私にはわかりませんし、ゲスの勘繰りの域を超えません。
 

 ちなみに、2012年3月期の連結当期純利益が288百万円と比較して、経営管理部長の不正170百万円の重要性は無視できません。今後の調査結果、注目しましょう。Taku