2012年8月 ソリトンシステムズ 経営管理部長不正 続報

 ソリトンシステムズの続報です。
 「もしかしたら会社に対する報復的な行為ではないか?」と勘繰ってしまった今回の不正事例ですが、同社の第三者委員会の報告書が公表されていました。個人的に興味を覚えたところを中心に説明しましょう。

 2012年8月9日付の第三者委員会の報告書によると、不正実行者である執行役員経営管理部長は、同年5月15日~6月28日までの間に、同社の小切手帳から、計10枚(合計170百万円)の小切手を作成し、10回にわたり、自ら小切手を銀行窓口に持参して、現金化しています。
 経営管理部長自らが、銀行窓口に小切手を持参するというのは、かなり異例な事態ですから、銀行窓口の人もその使途を訪ねていたようです。しかし、不正実行者は「社長の個人的な用途に使われる」と嘘の回答をしていたとされます。
 不正発覚直前は、立て続けに現金を引き出しています。
 6/25に20百万円(A銀行)、6/27に20百万円(B銀行)、6/28に20百万円(A銀行)。 発覚したのは、6/29の40百万円(B銀行)の引き出しの際です。
 B銀行への小切手持ち込みは、これで2回目でした。
 不審に思ったB銀行の担当者は、「本当に社長の個人的な使途なのかどうか」を会社への問い合わせをしたようです。会社側は当然これを否定しますから、不正実行者から事情を聴取するに至り、本事件が発覚しました。
 余談かも知れませんが、B銀行の窓口の人は2回目の出金で気が付いたことになりますが、A銀行の窓口では8回もの出金をしていました。A銀行側で、もっと早く気が付いていれば・・・。(もはや内部統制の議論ではなくなりますね。)

 この事件で不可思議なのは、不正の動機です。
 通常は、借金の返済やギャンブルその他、具体的な資金使途が明らかになるはずですが、この不正事例では「遊興費に費消」との曖昧な供述のみで、その供述を裏付ける資料等もないため、具体的な使途が明かになっていないのです。
 すでに費消されてしまっているのか、又は現金がどこかに隠匿されているのか、不明なままなのです。
 
 私が個人的に抱いた「不正実行者は会社に恨みを持っていたのでは?」という疑問については、同報告書は以下のように示しています。
 「元社員はソリトンが支払ってきた給与額に不満も漏らした事実はあったが、それ以外に、地位や昇進・昇給等で格別に不利益を受けた事実はない。本件不正行為が執行役員就任から5ヶ月後に行われていること、この間に、例えば、社長に強い叱責を受けた等の元社員をしてソリトンへの報復を動機付けるような事実も報告されていない」
 
 なるほど。特に会社に不満を持っていたわけではなさそうですね。 
 発覚することが解っていながら行った確信犯的な不正。
 その目的も定かでなく、現金の所在も不明な事件。
 なんとも不可解です。

 最後に、今回の不正についての同社が公表した再発防止策を五つ示します。
 ①経理組織の見直し
 ②支払いに関するチェック体制の強化
 ③内部通報制度の改善
 ④内部監査機能の強化
 ⑤従業員教育の拡充
 

 もともと、キッチリしている会社でこうした不正がおきると、なかなかどうして、その具体的な防止策の検討は難しいことなのかも知れません。なぜなら、「内部統制の限界」を克服する策を議論しているからでしょう。
 個人的には、この不正実行者を経営管理部長に昇進させたこと自体が問題であって、それ以上にこうした不正の再発防止策を講ずるのは、かえって非効率的な組織になるリスクを孕んでいると考えました。Taku