2013年5月 学校法人立教学院元職員の不正流用83百万円

立教池袋中学校・高等学校を運営する学校法人立教学院(東京・豊島区)は、「元職員による学校会計外資金の私的流用について」を公表しました。

立教学院の関係者は「これで済む」と思っているのでしょうか。

もちろん、私は関係者ではないので、これで済んでしまっても何ら問題にはならないのですが、仮に関係者であるならば、受け入れがたい事例といえるでしょう。

以下、本事例に関する個人的な感想です。不正そのものよりも、その不正の対応の異常さ、甘さに注目してください。

 

 1.退職と公表のタイミングが異常

 立教学院が公表した資料によると「元職員は・・・2000年から2011年までの12年間に・・・私的流用を行い、損害総額は83,127,763円でした。」とあります。これに関係して新聞報道では、20116月の人事異動で不正が発覚し、201345日付でこの職員は退職しています。

 発覚が遅いことは不正では良くあることでしょうが、退職のタイミングが遅すぎます。また、公表のタイミングも不可解です。

 通常は、不正が発覚すればクビ(懲戒解雇)です。加えて刑事告発もあり得る。しかし本事例では不正発覚後2年近くも元職員(59歳)が籍を置いていたことになります。異常です。

 また、通常は不正が発覚した時点で公表します。しかし、不正発覚後2年近くも公表しなかったことになります。これまた異常です。

 退職や公表が遅れたことについて詰問すれば立教学院は「調査の過程にあって公表を差し控えていた」などと抗弁するかもしれません。しかしそんな理屈は通じません。なぜなら、2年という期間が長すぎるからです。残念ながら、2年近くも不正事例を公表しなかったことを正当化することは、もはやできません。

 

2.盗んでも返せばOKは異常

 被害額が返済されるかどうかは、被害者側の感情に大きな影響を与え、その結果、被害者が刑事告訴するかどうかの判断に関係してくるでしょう。しかし本事例は、公共的な学校法人で起きた不正であり、新聞の社会面で取り上げられるほどに社会的な影響は大きい事件です。学校法人側もその影響の大きさは気がついているはずです。

いくら損害が賠償されたからとはいえ、こうした手癖の悪い人間に社会的な制裁を与えない、とすることは問題があるでしょう。言い過ぎでしょうか?

「人のものを盗んで見つかってしまっても返せばよい。」

そんな教育方針の学校法人が仮にあるならば・・・?

学校に通う子供達、卒業生、父兄の皆さんは、この不正事例と立教学院の対応をどのように感じているでしょうか?

 

 3.返済の確約と返済の見込みが異常

資料では、「総額83,127,763円のうち、これまでに約5,000万円の返済の目処が立っています。残額についても、本人から弁済の確約を得ており、全額を回収できる見込みです。」 

この記述も、呆れかえるほどに人を食ったような表現です。甘いです。

これを換言すれば「残額3,300万円は返済の目処が立っていないが、返済の確約を得ているから、全額回収できる」とも受け取れます。

他人のカネを83百万円も使い込んでいる泥棒の確約に何の意味があるのでしょうか?それを信じて疑わない姿勢が異常ですし、甘いです。 

加えて、不正実行者への退職金の支給も問題視します。

新聞報道では、「同法人は退職金や企業年金などで全額返済する確約を得ている」とあります。就業規則にもよりますが、一般には懲戒解雇の場合には退職金不支給とするケースが多いのが事実です。会社のカネを使い込んでクビになった人間に退職金を支払うなんて、まさに「盗人に追銭」。異常ですし甘いのです。

この異常さ、甘さはいったい何なのでしょうか?

大きな裏がありそうな気がしてなりません。

公表されている資料が少ないせいか、様々な憶測を呼びかねません。

もしかしたら、組織ぐるみの裏金を個人の責任に負わせたか?その退職を待って公表したのか?

まさか、そんなことはないのでしょう。

しかし、その仮説は、上記の異常や甘さに一定の合理性を付与するから不思議です。

でも「まさか」ですね。

 

余談ですが、過日、赤坂で先輩と飲みに行ったときの話を思い出しました。

「人生には三つの坂があるんだ。覚えておけ。『上り坂』と『下り坂』。それに・・・」

「聞いたことあります。『まさか』の坂でしょう?」

「いや・・・。『赤坂』だ。」

なんのことやら。Taku