2015年5月 北越紀州製紙の連結子会社における従業員不正

 北越紀州製紙株式会社の100%子会社である北越トレイディングの総務部長による不正です。20004月以降、15年にわたって行われた不正による着服金額は2,476百万円でした。期間も相当に長く、金額もかなり高額です(会社公表資料はこちら)。

不正の主な手法は、小切手の不正振出による現金着服、会社名義で締結されていた銀行との当座貸越契約を用いた不正借入による着服などでした。

不正実行者は不正の隠蔽のため、帳簿上の当座預金残高と銀行残高を一致させるべく残高証明書を偽造したり、当座預金から前払費用への振替や架空の商品在庫を帳簿に計上する処理を行ったり、小切手を振り出している一方で借入金を非計上としました。

長期にわたり不正が発覚しなかったのは、財務及び経理業務が一貫して不正実行者に集中していたため、内部牽制が有効に機能しなかったこと、及び銀行残高証明書の偽造、商品受払等の補助簿の改竄、不正な仕訳伝票の入力、偽造決算書の銀行提出などの隠蔽工作によるとされています。

税務調査や親会社の内部監査及び会計監査人の往査、更には銀行の審査といった種々の調査をくぐり抜けたのは「残念」と言うほかありません。

こうした単純な不正の場合、「残高確認で明らかになるだろう」と思ってしまうのですが、不正実行者としても「なんとかバレないように」様々な策を講じたのでしょう。例えば、使用していた口座を解約したとする虚偽の報告により、不正に使用している口座を金融機関の口座一覧から除外してしまえば、簿外借入の発見は困難が伴うかもしれません。

また簿外の借入さえ発覚されなければ、そこから得た資金を利用して様々な辻褄合わせが可能となりますから、他の不正の隠蔽も比較的容易にできたのでしょう。

 一方で、管理体制が不十分であったことも否めません。

不正に使用された銀行届出印は、不正実行者の管理責任者であった当時の副社長の管理下にありましたが、不正実行者は口頭で小切手の振出理由を説明することで押印を受けていたようです。副社長は事業内容について詳細な理解がなく、証憑の提示や事実関係の詳細な説明を受けずに、不正に作成した小切手に銀行届出印の押印をしていたのです。

さらに残念なのは、副社長の退任後に別の管理責任者である常務が銀行届出印を管理することになったものの、銀行届出印は常務の机の上に置かれ、理由の説明を要せずに、一言断りを入れれば自由に使用できる状況だったとのことです。

この不正発覚の発端は、不正実行者の休暇の際に銀行からの電話連絡での問い合わせがあったことだったようです。また、取引関係のない銀行からの封書から簿外の借入金の存在が明らかになったとの指摘もあります。

長年にわたって隠蔽され続けた不正。

いつかは発覚することを怖れ続けた不正実行者はこの不正発覚に何を思うのでしょうか。不正資金の使途はギャンブル、株、愛人、遊興費等に費消したとのことです。

長期間にわたり配置換えがなされなかったことは、大変不幸なことです。Taku