2013年12月 グリーンクロス元従業員による在庫の横流し

 2013年12月、工事現場で使用する安全機材用品等の販売・レンタルを行う株式会社グリーンクロス(福証)は「当社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。
 同社の2013年4月決算数値は、売上7,971百万円、経常利益665百万円、当期純利益365百万円であり、数値面でかなり健全な会社に見えますが、工事現場で使用する多くの種類の棚卸資産を保有しており、その棚卸対象外商品が不正の対象となったようです。
 不正実行者である元従業員は、7年間にわたり仕入れた商品を不正に転売し、その売却代金40百万円を着服していたようです。
 発覚の経緯は「商品の仕入れに対応する売上が計上されていないこと」が明らかになったためです。当たり前の話ですが、仕入だけが計上されて、売上が計上されなければ「おかしいな?」と気がつくわけですが、今回の不正は長年にわたり不正に気がつきませんでした。その理由として上記の報告書だけでは十分に把握できませんが、あくまで一般論としてこうした不正防止・発見策を考えてみましょう。
  
 第一に実地棚卸の重要性です。
 一般に棚卸資産は下記の三種に区分します。
A 定期的に実地棚卸を行うとともに継続的に受け払い記録も行う。
 この管理方法では「あるべき在庫数量」が常に把握されますから、棚卸による「実際の在庫数量」との差額は棚卸減耗として認識されます。棚卸の頻度を増やせばより厳密な管理体制となります。
B 定期的に実地棚卸を行うが継続的に受け払い記録は行わない。
 やや簡易な管理方法ですが、「前回の棚卸数量+仕入数量-今回の棚卸数量」を払い出し量とみなす方法で、棚卸減耗があったとしても払い出し数量に含まれてしまいます。Aほどに重要でない在庫に適用する方法です。
C 実地棚卸対象にもしないし継続的に受け払い記録も行わない。
 重要性の乏しい消耗品等の管理ではこれで十分です。購入した時点で「全部使った」として処理する方法です。
 重要なことは、自社が取り扱っている商品を「どのように管理するべきか」を責任者が意思決定することです。レアメタル等の稀少品であれば必然的にAで管理するでしょうし、ボールペンやコピー用紙等の少額・多量のものはCで管理するでしょう。
 報告書によると、今回の不正の対象となった商品は「棚卸管理外の一部の商品」でした。
 果たして、実地棚卸管理する必要がなかったのか?疑問が残るところです。

 第二に、売上管理・利益管理にも問題があった可能性があります。
 商品別の売上高及び利益率を把握していれば、「仕入だけ計上されて売上が計上されない」という状況は「直ちに」把握できたはずです。「どんぶり勘定」での利益管理は、他の商品の利益と相殺されて、どうしても細かい異常に気がつかないことが多いのです。
 特に多品種の商品を販売している場合には、どのレベル(商品別・商品群別・グループ別等)で利益管理を行うかについても重要な決めごとなのです(その際、利益管理の意思決定という問題意識だけでなく、不正の防止の観点も考慮する必要があるでしょう)。
 調査報告書で会社が指摘するように「発注した商品と受注との連動性」や「発注、検収、代金支払いに係る業務プロセスの再点検」も必要でしょうが、資産の保全のための「棚卸」と、利益管理のための「商品別利益管理」を徹底すれば、今回の不正は、ある程度、防止できるはずだと思います。
 特に業績の良い会社の場合、利益管理が「いい加減」となり、コスト面で「もっと無駄を省くことはできないか」という意識が乏しいことがあります。
 他に同様の不正が生じていないか、気になるところです。Taku