2011年12月 マキア在庫の水増し計上

在庫の水増しは、そのまま粗利益の増加をもたらします。

 そのため、在庫の水増しは粉飾の手法でも良く行われる手口です。

 本事件は「粉飾」と呼ぶほど大きな事件ではないかも知れません。というのも、「粉飾」といった場合は経営陣が主体となって組織的かつ大規模な数値の操作が行われることが通常だからです。本事件はあくまで仕入れ担当者個人が行った不正で金額的にも2011年9月末時点での棚卸資産の過大計上額は92百万円とされ、比較的小規模な虚偽表示でした。

 

 本事件で注目したいのは、以下の二点です。

 一つは、不正発覚の経緯として、監査法人の内部統制監査の過程で異常値が認められたことが上げられている点です。粉飾や不適切な会計処理が社会的な問題となる場合、多くのケースで「果たして監査法人は何をしていたのでしょうか?」といった指摘がなされますが、本ケースは監査法人が不正発見に寄与しています。しかし、「監査法人が不正発見」といった指摘はあまり見かけません。「当たり前だから」と言ってしまえばそれまでですが、監査法人による監査の社会的意義を見いだす一つの事件といっても良いでしょう。

 また、今ひとつはリスクとコントロールの関係です。

 虚偽表示が発生するリスクと虚偽表示が防止・発見・是正されるためのコントロールには密接な関係があります。本不正事例は、仕入担当者による伝票の操作によっていましたが、上司等の承認経路を経ずにそのままシステムパンチャーに提出され、入力されていたようです。

 これは、通常の商品コード以外の99コード(修理品や特注品等の処理に使うというコード)を利用しており、内部統制の構築する上でそのコードの売価改定があること自体が社内で想定されていなかったようです。

「99コードが利用されて売価改定がなされるリスク」が識別されていない以上、それを低減するためのコントロール(例えば伝票の改訂を行う場合には承認手続が必要とする等)は構築されません。

 「内部統制の構築はリスク評価から」といわれる所以です。