2013年11月 サニックス子会社での売上架空計上と期間帰属誤り

 太陽光発電システムの施工販売、環境衛生事業を手掛ける株式会社サニックス(東証一部、福証)は、「当社連結子会社の従業員による不正行為について」を公表しました。
 不適切な会計処理の概要は以下のとおりです。
(1)特定の従業員による架空売上計上
 産業用太陽光発電システムについて、施工の実態がないにもかかわらず売上計上していた(1件100百万円)。
(2)売上高の期間帰属の不適正計上
 7月に計上すべき売上高を6月に早期計上していた(13件173百万円)。

 

 上記の不適切な会計による同社の第1四半期(2013年4月~6月末)連結数値への影響は以下のとおりでした。
・売上高(誤 16,027百万円→正 15,753百万円(274百万円(1.7%)過大計上))、
・経常利益(誤 1,015百万円→正 924百万円(90百万円(9.7%)過大計上))
・当期純利益(誤 830百万円→正 778百万円(51百万円(6.5%)過大計上))
 また、年度の数値(2013年3月)と比較すると売上高43,366百万円(274/43,366=0.6%)、経常利益1,788百万円(90/1,788=5%)でした。

 

 一般に、重要性の基準値は税前利益の5%を利用しますから、本件については、「ギリギリ重要性あり」と判断したのかもしれませんが、状況如何によっては「重要でない」と判断することも考えられたのではないかと思われます。
 また、上記事実を踏まえて同社は、2013年3月の内部統制報告書について「内部統制は有効」から「内部統制は有効でない」と訂正しています。

 本不正発覚の発端は、内部監査室への匿名の通報だったようです。
 きっと社内事情に精通している者が、その正義心に駆られて通報したのでしょう。仮にそうだとすれば、不正を許さない組織風土による「自浄作用」が働いたと評価することもできるでしょう。
 確かに不正が発生したことは不幸なことですが、今回の不正をきっかけとして、同社はより厳密な業務プロセスを構築しています。下記は同社が公表した再発防止策としての内部統制の改善策の一部ですが、いずれも具体的かつ直接的であり、有効な手法と言えるでしょう。他社でも参考になるコントロールもきっとあると思います。
・売上計上の必須書類に施工行程ごとの現場写真と「工事完了チェックシート」を追加する。 → 写真添付は有効でしょう。偽装は困難です。
・関連書類の作成を担当する際、「契約書」は営業職、「施工完了報告書」工事現場写真、「工事完了チェックシート」は技術職が担当する。
 → 営業職と技術職との分掌により相互牽制が期待されます。
・本社お客様相談室から契約者に対して契約締結後及び施工完了後にお礼の電話をする
  → お客様と管理部門とが接触することは、不正を行おうとする営業職にとって大きな心理的牽制効果が期待されます。  

 上記事例は、不正発覚を契機として管理体制が充実強化された、典型的な「良い例」といえるでしょう。加えて、内部監査室への匿名の通報が10/7、不正行為の公表が11/7で、訂正報告等の公表が11/12でした。この早期対応も評価できるのではないでしょうか。
 同社では、今後、同様の不正は発生しないことでしょう。Taku