2011/11/1オリンパス アルティス社買収時の株主価値算定報告書と経営責任

オリンパスの損失隠し事件に関連して、同社が288億円で買収したアルティス社の株主価値算定報告書が2011年10月20日ネット上に公開されました(http://facta.co.jp/blog/archives/images/altis_Japanese.pdf)。

 これで、取締役会がまったく機能していないこと、現役員(取締役と監査役)は全員、善管注意疑義務を果たした経営を行っていないことが明らかになり、全員が退陣を余儀なくされることでしょう。

 企業価値の評価は、金の卵を産むガチョウの評価と同じというのが、現在の定説です。毎年、卵を何個産むか、それはいくらで売れるのか、そこから飼料代等を引いて手元に残るお金はいくらか。これにより金の卵を産むガチョウの評価が決まります。これと同様、企業価値も毎年いくらのキャッシュを生み出すのかによって、評価するのが定番のディスカウント・キャッシュ・フロー評価法(DCF法)です。この評価を決定づける重要な要素は、事業計画と加重資本平均コスト(WACC)です。WACCは技術的側面があるため、専門家の意見が重視される側面がありますが、金の卵を何個産むかについて、すなわち事業計画については、経営陣が十分に検討すべきことです。公開された株主価値算定報告書での事業計画では2008年の売上高631百万円、当期損失5百万円が2012年売上高193億円、当期利益42億円と急激な伸びを示しています。これを実現するための具体的な経営計画(市場、営業戦略、人材等々)についての検証は、買収承認時の取締役会で当然審議するべき事項です。これを怠れば、善管注意義務を果たしたことにならず、経営判断の原則からも逸脱していることになります。

 損失隠しに荷担しなかった取締役と監査役も、買収時に何も検討しなかったことが明らかになった以上、その責任を取ることは不可避となるでしょう。

Tetsu